「春、バーニーズで/吉田修一」を読んだ
二子玉川駅にあるbook1stで気になって買った吉田修一氏の連作短篇集
「春、
バーニーズで」(文春文庫)について。
主人公"筒井"は、小さな息子"文樹"がいる女性"瞳"と結婚し、父になった。で、
これはそんな主人公の幸せな日常の中に潜むふとした危うさを綴っている連作短篇集。
筒井は、かつて一緒に暮らしていたその人と、偶然バーニーズで再会し(from「春、バーニーズで」)、
妻とお互いに嘘を付き合って、衝撃的な嘘を言ったほうが勝ちという他愛の無い遊びを通して、「昔、オカマと同棲していた」と事実を語り、
妻からは「昔、オジサンに体を売ったことがある」と話される(from「夫婦の悪戯」)。そして、出社の途中"衝動的に"ハンドルを切り、
高校生のときに自分の隠した時計を探しに日光東照宮へ向かう(from「パーキングエリア」)。
急にいろんなことが嫌になり、会社に行かないなど、みんな、日常からの逃避行を図ったりして、普通に生きていながら、
ちょっとした危うさを抱えながら生きてるもの。過去や今の自分についてとか、かかわってる人との関係とか、
日常生活における危うさをうまく描いた小説です。モノクロの写真を眺めて、ゆっくり軽~く読みながら、ハッとする。そんな読後感でした。
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