「見張り塔から ずっと/重松清」を読んだ
三茶のTsutayaで、Bob Dylanの名曲"All Along The
Watchtower/見張り塔からずっと"と同じだと思って買った重松清氏の
「見張り塔から
ずっと」(新潮文庫)について。
これ、3つの家族の悲惨な憂鬱、そしてそれを見続けなければならない傍観者の物語。
バブルがはじけ、今後の発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす人々の中に、
新たに入居してきたとある家族。ここに生まれた憎悪と悪意を描いた"カラス"。
生まれて1年の息子を突然死で亡くしたある夫婦。その子供と同じ名前の少年がサッカー遊びで起こす騒音。
どんどん不安定になっていく妻。凝り固まった悲しみを描いた"扉を開けて"。
女子高校生とサラリーマンという関係でスタートした恋愛が、妊娠という形から結婚に至るが、その3日後に流産。
「三日早すぎた」と呟いた夫の言葉で、その後のすべての人生を否定された私。逃げられない悲しみを描いた"陽だまりの猫"。
この3つの小説を読んで感じたのは、重いと怖い。あまりにリアル。
ゴミのビニール袋を集積所まで運んでいく主人公の父親とゴミを持つ手が汚いからと父親と手をつなぎたがらない女の子と
「クレエッ!」と鳴きながら見つめるカラス。真面目に生きていて、それなりに希望もあったのに、どうしてこんなに不幸で惨めなんだと、
ほんと恐怖心が生まれてきた。
重松清氏、恐るべし...。
cf.重松清 読破 List
- 流星ワゴン
- いとしのヒナゴン
- 疾走
- 熱球
- くちぶえ番長
- 見張り塔からずっと
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