「ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶/大崎善生」を読んだ
なんとなく、はまりつつある大崎善生氏の小説たち。
で、今回は三茶のTsutayaで買った氏の短編集「ドイツイエロー、
もしくはある広場の記憶」(新潮文庫)について。これ、この前読んだ「九月の四分の一」
と同じようなTasteで、4人の女性が主人公の恋愛短編集。
高校生の理沙が、その母親から聞いた失った恋の話と自分の悲しみを重ねて、乗り越えていこうとする"キャトルセプタンブル"。
孤立した大学生活を送る19歳のかれんが、離婚して消えた父が残した言葉の意味を最後にみつける"容認できない海に、君は沈む"。
系統を維持するために60基の水槽でグッピーを飼う男性から彼女が得たものを描いた"ドイツイエロー"。そして、目的を見出せず、
自由にも馴染めない青春期の孤独な魂、喪失と希望を描いた"いつか、マヨール広場で"。
どの話も、残酷な喪失を描いているんだけど、どれも、その大事な出会いを忘れずに、
何年たっても色あせずに心の中に残っている。どんなに傷ついても、いつのまにか、淡いものに変わっていく。
そんなつらく忘れられない恋愛に救いを与えてくれる作品。
個人的によかったのは"キャトルセプタンブル"。あの"九月の四分の一"の後日談として、
連なりのあるこの話になんか救われた気分になれた。
それにしても、この大崎善生氏の書く文章は、残酷で生々しいことを書きつつも、ほんと淡々と平熱で静謐な文章だ。正直、
氏の小説の設定の多くは、自分の住む世界とはまったく違う非日常なものばかり。だけど、ドライな読後感に、凝り固まった肩の力が、
ふっと降りるのかも。
cf.大崎善生 読破 List
- ロックンロール
- パイロットフィッシュ
- アジアンタムブルー
- 孤独か、
それに等しいもの
- 九月の四分の一
- ドイツイエロー、
もしくはある広場の記憶
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