「レキシントンの幽霊/村上春樹」を読んだ
これも、
三茶のTsutayaで本を探してるときに目に入って読んでみた村上春樹氏の
「レキシントンの幽霊」
(文春文庫)について。
これ、短編集です。 どの小説も「孤独感」を描いてる。そして、どの小説も不思議で味わい深い。
"レキシントンの幽霊"。
友人ケイシーから古い屋敷の留守を託された作家が体験する不思議なできごと。父を失って、
昏々と眠り続けたケイシーの話を含め、誰の心にも内在する孤独感を描いた小説。
"緑色の獣"。
庭の土の中から這い出てきた緑色の醜い獣が主婦にプロポーズする。しかし、"私"である主婦が彼女の心の中でその獣を苛むと、
獣は悲鳴を上げて苦しむ...。なんか救いようのないけど、なんかがひっかかったシュールな小説。
"沈黙"。
クラスの中心的人物"青木"と対立し、その卑劣な罠にはまって孤立した"大沢さん"の高校時代の苦い思い出。#
平穏無事に生活していても、もし何かが起こったら、
もし何かひどく悪意のあるものがやってきてそういうものを根こそぎひっくりかえしてしまったら、...#。
突然何の前兆もなく現れる悪意についての不安感に少々共感。
"氷男"。
氷男とスキー場のホテルで知り合い、結婚した女性の物語。平穏で単調な結婚生活に耐えかねて、
南極への旅行を氷男に提案したことから何かが変わり始める。これ、どんなに長く一緒にいても、
結局はわかりあえないという哀しい孤独感が描かれてる。
"トニー滝谷"。
滝谷省三郎とその息子であるトニー滝谷の人生を描いた作品。トニー滝谷が恋に落ちて、
その後に訪れる孤独におけるトニー滝谷の心の揺らぎを描いた小説。
"七番目の男"。
子供の頃の台風の日に、台風の目の中、浜辺に出たために親友を波にさらわれた経緯を語る物語。自分の心の中にある恐怖が、
自らになにをもたらすかを描いてる。実はこの短編集で一番好きな小説。
"めくらやなぎと、眠る女"。
耳の調子が悪いいとこと病院に向かう主人公。"人を眠らせるめくらやなぎの花粉を運ぶ蝿が、人の体に入り込んで、
内臓を食べる"という不思議な話を語る友達のガールフレンドの話を思い出す主人公。暗いけどかすかな希望はあるものという話。
それにしても、村上春樹氏の世界って、哀しくて、ユーモアがあって、ちょっとした意志が入ってて、多彩でどこかひかれる。
氏のエッセイ(?)"走ることについて語るときに僕の語ること"を読んで、意志の源がわかった気がした。氏の作品集と出会って、
すでに20年が過ぎた。これからもよろしくお願いします。
cf.村上春樹 読破 List
- アフターダーク
- 海辺のカフカ
-
Mr.and Mrs.Baby and Other Stories-犬の人生/Mark Strand-マーク・
ストランド
- 東京奇譚集
- ふしぎな図書館/村上春樹・
佐々木マキ
- 神の子供たちはみな踊る
- レキシントンの幽霊
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