「卒業/重松清」を読んだ
いつか読破してみたい重松清氏の作品。
桜新町Tsutayaで買った「卒業」
(新潮文庫)について。
これ、4編からなる人生において避けられない"死"をThemeにした中編集。でもそこから気づくのはThemeはみな、
"前向きな人生を"ということ。
「まゆみのマーチ」:
死を迎えつつある母のため実家に帰る主人公"幸司"。病室で再会した妹の"まゆみ"は小学生の頃、
ある事件をきっかけに学校に行けなくなっていた。で、幸司の息子"亮介"も同じように学校にも行けない。
そのときの母親の姿勢や子供たちへの接し方を思い出し、母の最期の日に考える。
「あおげば尊し」:
主人公"峰岸"は、小学校の先生。癌に冒され、死を直前に迎えた父親も元教師。あまりに厳しすぎたため、
教え子たちは誰も見舞いに来ない。そんな父を自宅で看取ることになるのだが、その父の姿を、
死に興味がありずぎる峰岸の教え子"康弘"を見せることに...。
「卒業」:
40歳で課長代理の主人公"渡辺"の勤める会社に、ある日突然、"亜弥"という中学生が訪れる。彼女の亡き父親は、
渡辺のかつての親友で、彼女が生まれる前に自殺をした"伊藤"。亜弥は再婚した両親には内緒で、"伊藤真のお墓"という掲示板を立ち上げ、
亡き父親伊藤のことを調べていた。
「追伸」:
現在40歳の作家"敬一"は、6才の時に、母親を癌で亡くしていた。敬一の父親は数年後に再婚し、
新しい母親"ハルさん"ができたが、敬一の心の中では、母親はひとりだけ。亡くなった母親が病院で書いた日記を、心の糧に生きてきた。
この4つの小説、みな、ほんとにいい話だと思うけど、個人的によかったのは、「追伸」。
敬一とハルさんの少年時代からのもの凄く長くて深い確執が、どのように溶けて、心を開きあうかに結構感動。
敬一の亡くなった母親へのあまりに強い思慕に、正直イライラするところもあるんだけど、血のつながりではない心の触れ合いに、
素直にジーンときました。
で、この4つの小説で共通していることは、作者が書いてるけど、「許すことと許されること」。で、この4人の主人公たちは、
みな自分と年齢が近い40歳。人生の折り返し地点を過ぎて、
背負ってるものもそれなりに大きくなっているはず(自分の意識は低いけど...)。自分は許してるか、許してもらってるのか...。難しい。
cf. 重松清 読破 List
- 流星ワゴン
- いとしのヒナゴン
- 疾走
- 熱球
- くちぶえ番長
- 見張り塔からずっと
- リビング
- きよしこ
- 舞姫通信
- その日のまえに
- ブルーベリー
- ナイフ
- みぞれ
- 卒業
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