「模倣犯/宮部みゆき」を読んだ
Sktkさんから薦められて読んでみた宮部みゆき氏の長編ミステリ「模倣犯」(一/二/三/四/五)(新潮文庫)について。
こんな始まり。1996.9.12早朝、一家惨殺事件の唯一の生き残りである"塚田真一"は、愛犬ロッキーの散歩中に、
大川公園のゴミ箱から女性の右腕を発見してしまう。で、同じ公園からは、3ヶ月前に失踪したOL"古川鞠子"のハンドバッグが発見され、
マスコミが騒ぎ出す中、犯人を名乗る人物はHBSテレビに「右腕は古川鞠子のものではない」という電話をかけてくる。さらに、
古川鞠子の祖父"有馬義男"の元にも、犯人から電話があり、孫娘を心配する有馬の心をもてあそぶかのように、新宿に呼び出し、
翻弄していく...。
いやー、この本は長かった。読み応えあった。途中、"栗橋浩美"の心の闇を丹念にかつ執拗に描かれてるあたりは、
正直食傷気味だったけど、ともかく登場人物ひとり一人の描写など、本当に丁寧で、いい意味で異様なまでにしつこい作品。"網川浩一"、
"有馬義男"、"古川鞠子"、"前畑滋子"、"高井和明"、"栗橋浩美"、"武上悦郎"、"塚田真一"、"高井由美子"...。
彼らへのSpotlightのあて方が、本当に凄まじい。被害者と加害者の双方の視点から一つの事件を、これでもかと描写し続けたことが、
この小説の深みと濃さを作り上げてる。で、結局作者が言いたかったことは、「それでも犯罪者は愚かだ」に尽きる気がする。
この小説の9年後を舞台したという「楽園」は、ぜひいつか読んでみたい。ともかく、読み応え十分の「模倣犯」だった。
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