「薬指の標本/小川洋子」を読んだ
異様なタイトルに魅かれて読んでみた小川洋子氏の「薬指の標本」(新潮文庫)について。
これ、タイトルの「薬指の標本」と、もう1つ「六角形の小部屋」が収録されてる。それぞれのあらすじを書いてみると。
「薬指の標本」~清涼飲料水の工場で働いていたときに事故で薬指の先を失ってしまった"わたし"は、工場を辞め、たまたまたどり着いた標本室で働くことになる。そこは、封じ込めたい思い出(例えば、楽譜に書かれた音とか、愛鳥の骨とか)にまつわる品々が持ち込まれ、標本として保管される場所であった。そんなある日、"わたし"は標本室の標本技術者である"弟子丸氏"に靴をプレゼントされる...。
「六角形の小部屋」~Gymのプールで偶然出会った"ミドリさん"という初老の婦人に興味を持った"わたし"は、とある場所にある六角形の小部屋を知ってしまう。この部屋はまるで教会の懺悔室のように、誰にも聞かれずに思ってることを独白できる場所。そこで、"わたし"は誰にも言えなかった恋人とのことなどを話し出す...。
それにしても、特に「薬指の標本」は完全にファンタジーホラーだ。薬指とか足と一体化する靴とか、あまりに幻想的で綺麗で淡々とした文体に、ゾッとする悪意が見え隠れする(しかも表紙の絵も靴がかぶさってる...)。で、この標本技術者がやってることはあの映画「Kiss the Girls/コレクター」のよう。恋愛小説の皮を被ったサスペンスホラー。侮れない。
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