「新釈 走れメロス 他四篇/森見登美彦」を読んだ
京王八王子駅の啓文堂書店で、なぜだかひっかかった森見登美彦氏の「新釈 走れメロス 他四篇」(祥伝社文庫)について書いてみる。
これ、「山月記/中島敦」、「藪の中/芥川龍之介」、「走れメロス/太宰治」、「桜の森の満開の下/坂口安吾」、「百物語/森鴎外」といった古典の名作を勝手に解釈してグチャグチャにした短編集。しかも、京都を舞台に、5つの作品がつながってるのがミソ。簡単に内容を。
「山月記」:
自分に対する自負心と人に対する懐疑心で混乱した男が、大文字山に登り、最後は天狗になってしまう話。
「藪の中」:
京都のとある廃屋の屋上を舞台に、自分の彼女とその元カレ、そしてその2人を主役に自主制作映画"屋上"を撮ろうとする男。まわりの関係者を含め、その3人の人間模様がそれぞれの視点で描かれてる。
「走れメロス」:
約束の時間までに帰ってこなければ、友達がブリーフ一丁で学園祭の舞台で踊ることになってしまうのに、京都中を逃走する男の話。2人のゆがんで偏屈な友情がキモイ。
「桜の森の満開の下」:
恋人の助言で書いた小説で一躍人気作家となってしまった男の悲哀が描かれるHorrorっぽい話。その恋人の正体はなんなのか。
「百物語」:
噂の怪談"百物語"を聞くために集まった人々の不気味な話。
いずれの話も、GDGDで腐り切った生活を続ける京都の大学生達の話。不気味だし、汚いし、現実逃避だし、人を信じていないくせに寂しがってるし、屈折してるし、苦悩して絶望してるし、焦ってる...。なんかわかるようなわからないような不思議な読後感。ただ、オビに書いてるような"日本一愉快な青春小説"という気分にはなれない。それでも、その古典原作に対するそこはかとないRespectと愛情を感じることができた。初めて読んだ森見登美彦氏。ひっかかった...。
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