「あるキング/伊坂幸太郎」を読んだ
「SOSの猿」に続き、やっと順番が回ってきて、世田谷中央図書館で借りることができた伊坂幸太郎氏の「あるキング」(徳間書店)について。
こんなあらすじ。仙醍にある弱小地方プロ野球球団"仙醍キングス"の熱烈なファンである両親のもとに生まれた"山田王求"。"王が求め、王に求められる"ように、そして"王"と"求"の文字を繋げると「球」になる"王求"と名づけられた1人の少年。生まれた時から彼のずば抜けた才能に気づいた両親によって、プロ野球選手になるべく育てられた王求は、仙醍キングスへ入団するために、とてつもない力が備わった選手に育っていった...。
この作品、シェイクスピアの王の悲劇を引き合いに出しながら、天才が同時代・同空間に存在するときの周りの人間の戸惑いと畏れ、過度で異常な両親の思い込みと期待と強迫観念、そして本人自身の決して明らかにならない胸の内みたいなものが書かれている。で、いつもの伊坂作品のように、先へ先への読み進んでしまう「あるキング」だったけど、ともかく何かが違う。いつものどこかに罠が隠されてて、それがフックしてくるような巧妙な文体ではなく、思わず感心してしまう絶妙な言い回しもほぼない。いつもの感じるOff Beatとはまったく趣の異なる小説だった。個人的には戸惑いつつも、新たな伊坂氏の一面を見せてくれたFantasy作品だった。
cf.伊坂幸太郎 読破 List
- オーデュボンの祈り (2000/2003)
- ラッシュライフ (2002/2005)
- 陽気なギャングが地球を回す (2003/2006)
- 重力ピエロ (2003/2006)
- アヒルと鴨のコインロッカー (2003/2006)
- チルドレン (2004/2007)
- グラスホッパー (2004/2007)
- 死神の精度 (2005/2008)
- I LOVE YOU/伊坂幸太郎・石田衣良・市川拓司・中田永一・中村航・本多孝好 (2005/2007)
- 魔王 (2005)
- 魔王(文庫) (2008)
- 砂漠 (2005/2008)
- 終末のフール (2006)
- 陽気なギャングの日常と襲撃 (2006)
- フィッシュストーリー (2007)
- 絆のはなし/伊坂幸太郎x斉藤和義 (2007)
- ゴールデンスランバー (2007)
- 実験4号 -後藤を待ちながら (2008)
- Re-born はじまりの一歩/伊坂幸太郎・瀬尾まいこ・豊島ミホ・中島京子・平山瑞穂・福田栄一・宮下奈都 (2008)
- モダンタイムス (2008)
- あるキング (2009)
- SOSの猿 (2009)
« 「ASAHI SUPER DRY The LIVE Premium 斉藤和義」(M-ON)を観た | Main | 「The Curious Case of Benjamin Button/ベンジャミン・バトン 数奇な人生」を観た »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「当確師/真山仁」を読んだ(2024.11.29)
- 代官山通信 Vol.168(2024.11.27)
- 「Joker:Folie a Deux/ジョーカー フォリ・ア・ドゥ」パンフレットを読んだ(2024.11.21)
- 「プリンス/真山仁」を読んだ(2024.11.09)
- 「しんがりで寝ています/三浦しをん」を読んだ(2024.11.02)
Recent Comments