「光待つ場所へ/辻村深月」を読んだ
たまに無性に読みたくなって読んでる辻村深月氏。今回は、世田谷中央図書館で借りて読んだ彼女の最新短編作「光待つ場所へ」(2010)について。
この「光待つ場所へ」は、過去の彼女の作品のSpin Offという3つのこんな短編が集まられてる。
・「しあわせのこみち」:
大学文学部2年生"清水あやめ"。彼女には、自身の中にある感性を武器に、絵を描いてきたという自負がある。しかしある授業で、男子学生"田辺颯也"が作った美しい映像作品を見て、生まれて初めて圧倒的な敗北感を味わう...。
・「チハラトーコの物語」:
美人でスタイル抜群でオタク的な知識も持ってる"チハラトーコ"。彼女は、言葉に嘘を交ぜて、虚構の自らを飾ってきた"嘘つきのプロ"。そんな中、中学時代に知り合った図書館の書士、モデル仲間、売れっ子で強気な脚本家"赤羽環"と出会い、彼女は変わっていく...。
・「樹氷の街」:
中学校最後の合唱コンクール。指揮をとる"天木"は、立候補した"倉田"のピアノ伴奏は本番1ヶ月前になっても途中で止まり、クラス歌声もバラバラのままで、悩んでいた。そんな中、天木は、同級生の"松永郁也"が天才的なピアノの腕を持つことを知る...。
まず、「しあわせのこみち」はあの「冷たい校舎の時は止まる」のSpin Off。あの鷹野が再登場。それにしても、自信があっけなく崩れる瞬間って誰でもあるし、まさに青春小説のお題という感じ。あの悔しいときって、いつまでも残ってる。で、「チハラトーコの物語」は「スロウハイツの神様」のSpin Offとのこと。この「スロウハイツの神様」は読んでいないのでなんとも言えないけど、嘘が嘘によって塗り重ねられて、がんじがらめにされる感覚って、これも理解できる。おもしろおかしく会話をし続けないといけない感覚って、これもコミュニケーションが苦手だからこそと思う。共感できる。そして、「樹氷の街」は「凍りのくじら」のSpin Off。理帆子の再登場に思わず、ニヤリ。自分自身、合唱コンクールといった学校イベントに積極的に参加したほうではなく、とりあえず参加してた傍観者。ここまで熱くなるのって、あまり理解できなかった。逆にうらやましい気もする。
ともかく、この短編集は記憶の彼方に行ってしまった心の揺れや葛藤みたいなものをもう一度教えてくれた気がする。相変わらずみずみずしい文体が気持ちよかった。これからもボチボチ読んでいこう。
cf. 辻村深月 読破 List
- 冷たい校舎の時は止まる (2004)
- 凍りのくじら (2005)
- ぼくのメジャースプーン (2006)
- 光待つ場所へ (2010)
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