「WILL/本多孝好」を読んだ
たまーに読みたくなる本多孝好氏の作品。で、「MOMENT」に続いて読みたくなった姉妹作「WILL」(集英社)を世田谷中央図書館で借りて読んでみた。
こんな話。18歳のときに両親を事故で亡くし、家業の葬儀屋を継いだ"森野"。29歳になった今も、古株の"竹井"と新人の"桑田"の従業員とともに、寂れた商店街の片隅で葬儀屋を経営していた。そんな森野のもとには、仕事で関わった死者を媒介にした不思議な話が持ち込まれてくる。高校の同級生だった杏奈から依頼を受けて行った彼女の父親の葬儀。その葬儀の直後、杏奈の元に死者からのメッセージが届く話。一度執り行われた老人の葬儀を自分を喪主にしてやり直して欲しいと要求する女の話。10数年前に森野の両親が葬儀を行った男性の妻の元に通いつめる夫の生まれ変わりと名乗る少年の話。死者たちが伝えようとしているものは、何なのか...。
末期患者の最後の願いを叶える病院清掃人を描いた前作「MOMENT」の主人公"神田"の幼馴染で、葬儀屋を営む"森野"がこの「WILL」の主人公。この森野の視点で本作は描かれているんだけど、前作同様、淡々と日々を営みながら、真実を探していくというもの。前作から7年が経って、森野も神田も若干大人になって、ちょっとだけ成長している。しかも前作は死の瞬間をどう迎えるかというものだったけど、本作は死を乗り越えて、どう死と向き合うかがポイントになっている。それにしてもこの本多孝好氏の作風は、澄んだ透明感があって、どことなく暖かい読後感が残る。これからも読み続けたい作家の一人だ。
cf.本多孝好 読破 List
- MOMENT (2002)
- I LOVE YOU/伊坂幸太郎・石田衣良・市川拓司・中田永一・中村航・本多孝好 (2005/2007)
- Fine Days (2007)
- WILL (2009)
追記:というわけで、今日から2泊3日で中国上海出張。中国に行くのは18回目(上海は17回目)。いろいろややこしいけど、がんばろう。
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