「太陽の塔/森見登美彦」を読んだ
去年の年末、「新釈 走れメロス 他四篇」を読んでひっかかった森見登美彦氏。で、三茶のTsutayaの買ってみた「太陽の塔」(新潮文庫)について。
こんなあらすじ。京都大学農学部の5回生で、現在自主休学中の"私"は、かつての恋人"水尾さん"を研究すべく観察し、執拗に追いかけまわし、240枚にわたる大レポートを書き上げていた。そんな中、水尾さんを追いかけるもう一人の男"遠藤"と出会う。遠藤は私の研究を妨害するが、私も負けじと報復する。ある日暴漢に襲われそうになった私は遠藤に助けられ、遠藤から水尾さんを追いかける理由を聞かされる。そしてクリスマスの日、京都四条河原町でええじゃないか騒動が勃発する...。
これ、京都を舞台にしたドロドロでグダグダの妄想青春小説。華がなく、絶望的で、不潔で、不毛で寒い四畳半の中、異様なTentionで物語が進んでいく。女性と絶望的に縁がない野郎たちのイケテナイ日常と、打倒クリスマスを目論んでのひょんな躁状態が、麺カタこってりで描かれている。
この本もそうなんだけど、古典っぽいお堅い文章の中に、コンビニや携帯やビデオ屋といった現代的な風景や世相が出てくるあたりが、なぜだかとても新鮮。自分は四ツ谷系だったけど、もし京都で学生時代を送っていたら、街のにおいとかも思い出して、すごく共鳴できたかもしれない。とはいっても、高校は男子校なもので、この男汁臭い匂いは悲しいほど共感できてしまう。ほんとこの感じは懐かしくて、案外切ない。
というわけで、たまに無性に読みたくなる森見登美彦氏。またひっかかった...。
cf. 森見登美彦 読破 List
- 太陽の塔 (2003)
- 新釈 走れメロス 他四篇 (2007)
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