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Monday, January 24, 2011

「ユーラシアの双子/大崎善生」を読んだ

Yoshioosaki_eurasianofutago1Yoshioosaki_eurasianofutago2 ほとんどの作品を読んできている大崎善生氏。去年2010年に刊行された最新作「ユーラシアの双子」</>(講談社)を、世田谷図書館で借りて読んでみた。
 こんな話。自殺した長女、癌で病床にいる妻をもち、50歳で会社を早期退職した石井隆平は、自分の半生を噛みしめながら、ウラジオストクからリスボンまで、ひとりユーラシア大陸横断の旅に出た。留まったウラジオストクで、自殺を決意し同じルートで旅をしているエリカの存在を知った石井は、彼女の自殺を思いとどめさせることを決意し、彼女の手がかりを探し続ける...。
 新潟から日本海を超え、ウラジオストク、イルクーツク、モスクワ、ベルリン、フランクフルト、フライブルク、パリ、バルセロナ、そしてリスボンまで、50歳の男が一人の少女を追い続けるRoad Movieのような作品。長女の自殺の責任を、自分に問い続けながら、凍てついたココロを抱えた旅が続くんだけど、その絶望と孤独の中、救済を求めていくのがこの小説のテーマ。ともかく、この石井は、ビール、ワイン、ウォッカ、焼酎などを飲み続けながら旅を続ける。混沌とした思いを酒の中にも探しながら、自殺する少女を追いかけ、自分を追い詰めていく感じが、せっぱつまってるけど、どこか微笑ましくて、どこか理解できる。そして、シベリア特急とかさまざまな列車を乗り継いで、その土地土地でいろんな人種やそれぞれの歴史観や文化を感じていくのもいい。
 最終的には、後悔しても足りない悔悟の無限ループの中で、わずかな希望を手にし、リスボンでの終末を迎えるシーンが、凄くよかったと思う。静かな中にも文章の中に、激しい感情を書く大崎善生氏は、ほんと好きな作家のひとりだ。次は、図書館に「存在という名のダンス」を予約中。これも楽しみだ。

cf.大崎善生 読破 List
- 将棋の子 (2001)
- パイロットフィッシュ (2001)
- アジアンタムブルー (2002)
- 九月の四分の一 (2003)
- ドナウよ、静かに流れよ (2003)
- ロックンロール (2003)
- 孤独か、それに等しいもの (2004)
- 別れの後の静かな午後 (2004)
- ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 (2005)
- 優しい子よ (2006)
- タペストリーホワイト (2006)
- 傘の自由化は可能か (2006)
- スワンソング (2007)
- ディスカスの飼い方 (2009)
- ランプコントロール (2010)
- ユーラシアの双子 (2010)

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Comments

品川区図書館で偶然みつけたユーラシアの双子。二年前に定年退職し、パリを起点に3ケ月間近隣の国々を訪問する貴重な経験を持つことができた。そんな旅行を思い出しながらユーラシアの双子を拝読しました。ベルリン、パリ、バルセロナ、マドリッドなどが懐かしく目に浮かびます。ついつい引き込まれ完読してしまいました。もっとはやくこの小説に出会いたかったというのが感想です。堪能しました。

Posted by: 佐久間昂 | Saturday, August 06, 2011 16:36

>佐久間さん
はじめまして。コメントをありがとうございます。
自分は行ったことがないのでわからないところもありますが、行かれたかたには情景が浮かぶ作品なのかと思います。今後ともよろしくお願いします。

Posted by: emam | Sunday, August 07, 2011 06:27

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