「虐殺器官/伊藤計劃」を読んだ
二子玉川駅のBook 1stで、平積み展示と店員さんの手書きPOPにひっかかった伊藤計劃氏の「虐殺器官」(早川書房)。読んでみた。
こんな話。サラエボが手作りの核爆弾によって消滅した世界。先進諸国は自由とひきかえに市民の監視を徹底し、発展途上国では内戦と民族衝突による大規模虐殺が頻発していた。そこで、アメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊のクラヴィス・シェパード大尉は、心理操作とハイテク装備によって、紛争地域に潜入し任務を遂行していた。そんな中、各地で起こる大量虐殺の背後で、つねに見え隠れする米国人ジョン・ポールの影に気付く...。
この小説は、近未来舞台にした国際軍事謀略を描いたSFサスペンス。心理描写が多い重厚な文章の中、目をつぶりたくなるほど、惨殺、虐殺シーンが浮かんでくる。で、その心理描写に出てくる風景や要素(この小説ではモジュールっていうべきかも)は、自分が好きな世界と似ている(ここではシンクっていうのかも)。「Blade Runner/ブレードランナー」の煙った情景、「Apocalypse Now/地獄の黙示録」のKurtz大佐とWillard大尉の関係性、「Darwin's Nightmare/ダーウィンの悪夢」でのナイルパーチによる生態系破壊など、自分がひっかかった世界観とモジュールが、この小説につながっている気がした。そして、人々を狂わす"虐殺の器官"も徐々にわかっていき、ヘビーだけど、ジワジワ迫ってくる圧迫感が心地いい。
で、この小説で初めて、伊藤計劃氏のことを知ったんだけど、2009年に34歳の若さで肺癌で急逝している。しかも作家として活動期間は3年にも満たなかったらしい。いまさらなんですが、ご冥福をお祈りします。他の伊藤計劃氏の作品、「METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS」と「ハーモニー」は、いつか読んでみたい。
cf. 伊藤計劃 読破 List
- 虐殺器官 (2007)
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