「Railway Stories/大崎善生」を読んだ
ここ最近、思いだしたように読みまくってる大崎善生氏。「ユーラシアの双子」、「存在という名のダンス」に続き世田谷中央図書館で借りて読んでみた短編集「Railway Stories」(ポプラ社)について。
これ、全ての話に列車が出てきて、その列車に乗りながら、遠い過去や記憶を旅していくというノスタルジックな短編小説。「夏の雫」、「橋または島々の喪失」、「失われた鳥たちの夢」、「不完全な円」、「もしその歌が、たとえようもなく悲しいのなら」、「フランスの自由に、どのくらい僕らは、追いつけたのか?」、「さようなら、僕のスウィニー」、「虚無の紐」、「キャラメルの箱」、そして「確かな海と不確かな空」の10篇の短編が収められてる。
で、個人的に良かったのは、「失われた鳥たちの夢」と「もしその歌が、たとえようもなく悲しいのなら」と「さようなら、僕のスウィニー」の3つ。卵詰まりのメジロを助ける「失われた鳥たちの夢」は、少年の頃の思い出の大学生の頃の思い出が交差することのノスタルジー。少年の3人ではたらいた万引きを描いた「もしその歌が、たとえようもなく悲しいのなら」は、友達に裏切られ、友達を裏切ることができなかったことへのノスタルジー。そして、小さな公園で出会ったスウィニーと過した1週間を描いた「さようなら、僕のスウィニー」は、サラっと生活の中に入ってきて出て行った少女とのノスタルジー。列車に乗りながら、そんな思い出と儚い記憶が、ココロの中に浮かび上がって、ジーンとする。
私小説っぽい話、架空の話...。大崎善生氏は、本当に過ぎ去った過去をいとおしく描いてる。いい短編集だった。これ、お勧めです。
cf.大崎善生 読破 List
- 将棋の子 (2001)
- パイロットフィッシュ (2001)
- アジアンタムブルー (2002)
- 九月の四分の一 (2003)
- ドナウよ、静かに流れよ (2003)
- ロックンロール (2003)
- 孤独か、それに等しいもの (2004)
- 別れの後の静かな午後 (2004)
- ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 (2005)
- 優しい子よ (2006)
- タペストリーホワイト (2006)
- 傘の自由化は可能か (2006)
- スワンソング (2007)
- ディスカスの飼い方 (2009)
- 存在という名のダンス (2010)
- Railway Stories (2010)
- ランプコントロール (2010)
- ユーラシアの双子 (2010)
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