「蛍・納屋を焼く・その他の短編/村上春樹」を読んだ
この5月連休、箱根に行った際、一気に読んでしまった村上春樹さんの「蛍・納屋を焼く・その他の短編」(新潮文庫)。これ、村上春樹さんの初期の短編集なんだけど、ほんと20数年ぶりに再読したという感じ。
で、この短編集は、「螢」、「納屋を焼く」、「踊る小人」、「めくらやなぎと眠る女」、「三つのドイツ幻想 1.冬の博物館としてのポルノグラフィー 2.ヘルマン・ゲーリング要塞1983 3.ヘルWの空中庭園」の7つの短編が収録されている。その後、「蛍」から「ノルウェーの森」が生まれ、「めくらやなぎと眠る女」が改訂され、「めくらやなぎと、眠る女」(「レキシントンの幽霊」に収録)となっている。
で、この短編の中で、やっぱり好きなのは、まずは「ノルウェイの森」の原点ともいえる「螢」。亡くなった親友の彼女とのせつなくて、儚い関係が、蛍の発光のようによわよわしい。ダッフルコートを通して伝わってくる痛さがいい。そして、「納屋を焼く」。彼女の複数いる彼氏から聞いた"納屋へガソリンをかけて火をつけ焼いてしまうのが趣味"という淡々とした冷たい告白もいい。それにしても、この初期の春樹さんの小説って、その後の作品の原石になっている。作品もそうだけど、作風が凛としてるけど、ユーモアがあって、スパッとしてるけど、混沌していて、不思議な読後感に陥る。ずっと好きなのも、こんな不思議な読後感に浸りたいからかも。昔の作品も、その後の作品をバランスよく読めるんで、ずっと離れられない。
cf.村上春樹 読破 List
- 風の歌を聴け (1979)
- 中国行きのスロウ・ボート (1980)
- カンガルー日和 (1981)
- 象工場のハッピーエンド/村上春樹・安西水丸 (1983)
- 蛍・納屋を焼く・その他の短編 (1984)
- 回転木馬のデッド・ヒート (1985)
- パン屋再襲撃 (1986)
- レキシントンの幽霊 (1986)
- ランゲルハンス島の午後/村上春樹・安西水丸 (1986)
- ノルウェイの森 (1987)
- TVピープル (1990)
- もし僕らのことばがウィスキーであったなら (1997)
- ふわふわ/村上春樹・安西水丸 (1998)
- Mr.and Mrs.Baby and Other Stories-犬の人生/Mark Strand-マーク・ストランド (1998)
- 神の子供たちはみな踊る (1999-2000)
- 海辺のカフカ (2002)
- アフターダーク (2004)
- 東京奇譚集 (2005)
- ふしぎな図書館/村上春樹・佐々木マキ (2005)
- 走ることについて語るときに僕の語ること (2007)
- 1Q84 a novel BOOK 1<4月-6月> (2009)
- 1Q84 a novel BOOK 2<7月-9月> (2009)
- 1Q84 a novel BOOK 3<10月-12月> (2010)
- ねむり (2010)
- 村上春樹 雑文集 (2011)
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