「走れ!タカハシ/村上龍」を読んだ
大昔の大学生だった頃読んだことがある村上龍氏の連作集「走れ!タカハシ」(講談社文庫)。これも桜新町のTsutayaでもう一度手に取って読んでみた。
これ、広島カープの選手だった高橋慶彦さんをテーマにした短編集。高橋慶彦選手に自分勝手に思いをはせ、応援し、願いをし、夢を託し、ちょっとした運命をかけた普通の人々の話が集まったもの。中身的にはともかく高橋慶彦選手のように、爽やかで軽妙で愉快で楽しい小説。
で、個人的に一番よかったのは、「PART4 カウンターで飲んでいるとき、いつも思うのだが、バーテンダーというのは何と崇高な職業なのだろう」。これ、女性問題で裁判にかけられ、悩むTVプロデューサーが、ある女性に裁判での証言を頼んだところ、証言台に立つかわり、タカハシ選手に会わせてほしいとせがまれてしまう話。なんとかタカハシ選手へのコネをつかもうとしても、お願いした人全員に代わりのお願いされてしまっていく。まさに逆わらしべ長者状態に陥っていくという話。
村上龍さんの小説って、暴力や虐殺や混乱を描いたり、経済を描いたり、歪んだ家族を描いたり、SFを描いたり、映画や料理を描いたり、キューバを描いたり、そして性を描いたりと、実は多彩な作家だ。そんな中、この「走れ!タカハシ」はスポーツをネタにしたともかく楽しい小説。あの名作「69 sixty nine」にならぶ爽やかなものだ。それにしても、ここ最近はまったく野球を観ることがなくなった。きっと家を出て、親元を離れ、友達とキャッチボールをすることもなくなり、そして野球と離れていったんだと思う。でも、自分の周りにはいまでも、野球が好きで、試合を観に行ったり、実際やってる人もいる。ちょっとうらやましいかも...。
cf.村上龍 読破 List
- 限りなく透明に近いブルー (1976)
- コインロッカー・ベイビーズ (1980)
- 走れ!タカハシ (1986)
- 69 sixty nine (1987)
- 愛と幻想のファシズム (1987)
- 超電導ナイトクラブ (1991)
- 長崎オランダ村 (1992)
- 昭和歌謡大全集 (1994)
- 五分後の世界 (1994)
- 村上龍映画小説集 (1995)
- ヒュウガ・ウイルス~五分後の世界II (1996)
- ストレンジ・デイズ (1997)
- イン ザ・ミソスープ (1997)
- 共生虫 (2000)
- 希望の国のエクソダス (2000)
- 2days 4girls (2002)
- 半島を出よ (2005)
- 空港にて (2005)
- 盾 Shield (2006)
- 美しい時間/小池真理子・村上龍 (2006)
- 案外、買い物好き (2007)
- 歌うクジラ (2010)
- 逃げる中高年、欲望のない若者たち (2010)
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