「心はあなたのもとに/村上龍」を読んだ
もう30年近く読み続けてる村上龍さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた最新刊の「心はあなたのもとに」(文藝春秋)について。
こんな話。投資組合を経営する50歳のケンジは、1型糖尿病を患った風俗嬢サクラと出会った。本名を香奈子というサクラと643通にもおよびメールのやり取りをし、ケンジは投資案件や金融情勢を常に気にかけながら、その日を迎えて行く...。
この本、550ページ以上にもおよぶ大量の文量の大作恋愛小説。経済的に満たされた50代の男と病気を抱えた離婚経験のある元風俗嬢の女の物語。不倫という関係における弱い女が強い男に庇護される図式から、いつのまにか微妙に逆転していく。恋愛の意味とか、仕事とのバランスとか、結局大事なものはなんなのかとかが、これでもかとこってりと描かれていた。
で、この本によって、1型糖尿病のことを知って、そのやっかいな状況について初めて知った。そして、この本でよかったのは、その目標がわかれば、目標が遠くても、近づくために少しづつ努力できる話とか、人生には目標が必要で、それがあれば自立できて、一人でも生きていける話とか、こってりした恋愛小説の中に、そんな話が埋め込まれていたこと。そして、正しいか間違っているかわからないけど、どこまで相手のことを思って理解しているかなんてことも、埋め込まれていた。暗い話なんだけど、どこかにつなげられるところがよかった。いろいろひっかかった小説だった。
そうそう、この本のカバーに映ってる公園のベンチの写真、いいと思います。
cf.村上龍 読破 List
- 限りなく透明に近いブルー (1976)
- コインロッカー・ベイビーズ (1980)
- 走れ!タカハシ (1986)
- 69 sixty nine (1987)
- 愛と幻想のファシズム (1987)
- 超電導ナイトクラブ (1991)
- 長崎オランダ村 (1992)
- 昭和歌謡大全集 (1994)
- 五分後の世界 (1994)
- 村上龍映画小説集 (1995)
- ヒュウガ・ウイルス~五分後の世界II (1996)
- ストレンジ・デイズ (1997)
- イン ザ・ミソスープ (1997)
- 共生虫 (2000)
- 希望の国のエクソダス (2000)
- 2days 4girls (2002)
- 半島を出よ (2005)
- 空港にて (2005)
- 盾 Shield (2006)
- 美しい時間/小池真理子・村上龍 (2006)
- 案外、買い物好き (2007)
- 歌うクジラ (2010)
- 逃げる中高年、欲望のない若者たち (2010)
- 心はあなたのもとに (2011)
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