「往復書簡/湊かなえ」を読んだ
去年の8月、世田谷中央図書館に予約してやっと今月順番がまわってきた湊かなえ氏の「往復書簡」(幻冬舎)について。
これ、「十年後の卒業文集」、「二十年後の宿題」、「十五年後の補修」の3つからなる短編集。いずれも手紙のやり取りによって、それぞれの過去が明かされていくというもの。こんな話。
「十年後の卒業文集」:
高校卒業以来10年ぶりに、放送部の同級生が地元での結婚式で集まった。女子4人のうち、"千秋"ひとりが行方不明ということで、そこには5年前のある事故が影を落としていた。真実を知りたい"悦子"は、式の後、事故現場にいたという"あずみ"と"静香"に手紙を送る...。
「二十年後の宿題」:
入院中の恩師"竹沢"から、教え子の"大場"は、元生徒6人の近況を調べて欲しいという依頼を手紙で受けた。なぜこの6人について知りたいのか、それをなぜ"大場"に託したのか。6人の調査を進めた"大場"は、20年前に起きたある事故にたどり着く...。
「十五年後の補修」:
何の相談もせずに突然勝手に、国際ボランティアとしてP国へ旅立って行った恋人の"純一"。残された"万里子"は、手紙が届くまでに20日もかかるP国の"純一"へ、初めてのエアメールを書いた。手紙のやり取りをしていく"万里子"は、15年前のある事件の記憶がよみがえっていく...。
手紙って、最近まったく書くことがなくなったけど、手紙だからこそ嘘をついたり、虚勢を張ったり、告白したり、大袈裟に振舞ったり、こっ恥ずかしいことを書いてしまったり、後で凹んだり、過去を許してしまうこともありがち。でも、正直、もう手紙を書くことはないだろうし、そんなやり取りはなくなっていくかもしれない。コミュニケーションのしかたが変わっていくけど、昔つきあってた人々とどうつながるか、つながる必要ってあるのか。そんなことを考えた本だった。
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