「ソロモンの犬/道尾秀介」を読んだ
ぼちぼち読んでる道尾秀介氏。ちょっと面白そうだったので、三茶Tsutayaで買って読んだ「ソロモンの犬」(文春文庫)について。
こんな話。秋内、京也、ひろ子、智佳たち大学生4人の前で、彼らが通う大学教授の息子・陽介が交通事故にあって亡くなってしまう。突然走り出した飼犬に引きずられて、道路に飛び出してしまったのだ。従順だった飼犬のあまりに不自然な動きに疑問を感じた秋内は、動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く...。
「ソロモンはダビデの一人息子でね、父親のあとを継いで古代イスラエルの王になった人なんだけど―旧約聖書にこんなことが書かれているんだ。『ソロモン王は魔法の指輪を嵌めて、獣や鳥や魚と語った』」
「その王様、動物と会話ができたんですか?」
「そう、できたんだ。欲しいよね、そんな指輪」
そんな動物(この小説の場合は犬)と会話ができたらという動物行動学的な伏線がありつつ、実際隠された悲しみの連鎖がこの小説のウリ。いつのまにか陽介の死から4人の大学生たちが直面していく青春のみじめさと青さにつながっていくという不思議なミステリーになっていった。ただ、秋内を初めとした大学生たちは、それぞれがバラバラに痛みや弱さを抱えていて、やってることの挙動不審さがとても脆くて、でもトーンはおかしい。こんな青春小説ってあるんだなって思った。
一般的なミステリーでもなく、青春小説でもなく、どこかがはみ出してる小説だった。はい、面白かったです。
cf. 道尾秀介 読破 List
- 向日葵の咲かない夏 (2005)
- ソロモンの犬 (2007)
- カラスの親指 by rule of CROW'S thumb (2008)
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