「櫻の樹の下には瓦礫が埋まっている/村上龍」を読んだ
もう30年近く読み続けてる村上龍さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた最新刊の「櫻の樹の下には瓦礫が埋まっている」(KKベストセラーズ)について。
これ、"メンズジョーカー"に連載されてるエッセイで、2011年1月号から2012年6月号の分が収録されている。若者に対して億劫で興味がないとか、書くべき題材が若者にはないとか、今の若者には希望がなくて、欲望もない、偏愛がないとか、最低賃金のこととか、尖閣諸島問題をはじめ中国になめられてるとか、リピーターを獲得するために必要なこととか、ユッケやレバ刺しといった食のこととか、スポーツ以外の国際化は日本にはないとか、あかわらずの龍節が続くんだけど、やっぱりこの時期ということで、震災のことに触れられている。
政府の震災や原発に対する対応などにも書いているけど、一番は、まさに衰退するこの国を襲った未曾有の危機ということで、「絆」という美しい言葉が隠蔽する問題の本質についてのこと。被災者や被災地を思う気持ちだけでは解決できない問題が山積みされているのに、この「絆」という美しい言葉が、すべてを隠してしまう危険性について触れている。これはある意味、共感した。確かに危ない。
で、この本で一番好きな言葉はこれ。
「ただ、若年層から社会的影響が失われると、面倒な事態が起こる。じいさんたちが居座って退こうとしなくなるのだ。政治でもビジネスでも、あるいは学問の世界でも、じいさんたちが居座ることは罪悪だ。じいさんと呼ぶと蔑視しているような誤ったニュアンスがあるので、高齢者と呼ぼう。高齢者は、若年層に比べて体力面で劣る。歳を取れば取るほど元気になっていく生物は地球上に存在しない。」
元気なじいさんは必要だけど、その去り際が大事ということ。これは自分の今後も含めて、ほんとにそう思う。
cf.村上龍 読破 List
- 限りなく透明に近いブルー (1976)
- コインロッカー・ベイビーズ (1980)
- 走れ!タカハシ (1986)
- 69 sixty nine (1987)
- 愛と幻想のファシズム (1987)
- 超電導ナイトクラブ (1991)
- 長崎オランダ村 (1992)
- 昭和歌謡大全集 (1994)
- 五分後の世界 (1994)
- 村上龍映画小説集 (1995)
- ヒュウガ・ウイルス~五分後の世界II (1996)
- ストレンジ・デイズ (1997)
- イン ザ・ミソスープ (1997)
- 共生虫 (2000)
- 希望の国のエクソダス (2000)
- 2days 4girls (2002)
- 半島を出よ (2005)
- 空港にて (2005)
- 盾 Shield (2006)
- 美しい時間/小池真理子・村上龍 (2006)
- 案外、買い物好き (2007)
- 歌うクジラ (2010)
- 逃げる中高年、欲望のない若者たち (2010)
- 心はあなたのもとに (2011)
- 櫻の樹の下には瓦礫が埋まっている (2012)
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