「痛み/貫井徳郎・福田和代・誉田哲也」を読んだ
ずーっと読み続けてる誉田哲也の短編も読めるということで、世田谷中央図書館で借りて読んでみた貫井徳郎、福田和代、誉田哲也の「痛み」(双葉社)について。
これ、3人の作家が書いた警察小説アンソロジー。それぞれこんなあらすじ。
・「見ざる、書かざる、言わざる ハーシュソサエティ/貫井徳郎」:
ファッションデザイナーの"野明"が何者かに襲われた。野明は、両目をつぶされ、指は切り取れ、舌をもぎ取らるという悲惨な拷問を受けて発見された。"吉川刑事"は事情聴取に向かったが...。
・「シザーズ/福田和代」:
外国人による犯罪が多発する中、通訳捜査官として中国語が堪能な"城"は、妻に逃げられ、幼い娘をかかえていた。そんな中、風俗店の摘発から、偽ブランド品を売る男を追うことになったが...。
・「三十九番/誉田哲也」:
留置所の刑務官である"小西"は、元留置人で三十九番と呼ばれていたユキに関する黒い噂によって、元留置人の加賀美に脅迫されていた...。
まず、貫井徳郎さんの「見ざる、書かざる、言わざる ハーシュソサエティ」。これ、凄惨過ぎて読んでいるだけで、痛くなってくる。ただ、結末はあまりに短絡的で、犯人描写の深みが足りず、そのGapが正直いまいち。そういった意味でも痛い短編。
続いて、福田和代さんの「シザーズ」。外国人犯罪において、刑事の取り調べを補佐し自供を引き出す補佐的な役割という通訳捜査官という仕事を初めて知った。この通訳捜査官と警視庁保安課刑事がコンビを組むことで、ハサミ(=シザーズ)の諸刃のように片方の痛みを自分の痛みに変えていく流れが好感持てた。ま、この3作の中では若干地味だったけど...。
そして、誉田哲也さんの「三十九番」。番号で呼ばれる留置人との関係で、刑務官が徐々に追い込まれ、狂気的な破滅に向かっていく話。ひとつの秘密や嘘でつまずくと、どこまでも堕ちていくという人間の弱さと悲惨さがスリリングに描かれていた。特にラストで描かれた驚愕の痛みが凄まじい。留置場という密室で起きたこの話、個人的にはダントツに面白かった。
やっぱり誉田哲也さんのダークな世界観は、自分的にはとってもツボ。あらためて読み続けていきたい作家だと思った。
cf.誉田哲也 読破 List
- 妖の華 (2003/2011)
- アクセス (2004)
- 春を嫌いになった理由 (2005)
- 疾風ガール (2005)
- ジウI 警視庁特殊犯捜査係 (2005)
- ストロベリーナイト (2006)
- ジウII 警視庁特殊急襲部隊 (2006)
- ジウIII 新世界秩序 (2006)
- 月光 (2006)
- ソウルケイジ (2007)
- 武士道シックスティーン (2007)
- 国境事変 (2007)
- シンメトリー (2008)
- 武士道セブンティーン (2008)
- ヒトリシズカ (2008)
- ガール・ミーツ・ガール (2009)
- 武士道エイティーン (2009)
- ハング (2009)
- インビジブルレイン (2009)
- 世界でいちばん長い写真 (2010)
- 歌舞伎町セブン (2010)
- 感染遊戯 (2011)
- レイジ (2011)
- ドルチェ (2011)
- あなたの本 (2012)
- 誉田哲也 All Works/誉田哲也(監修) (2012)
- 痛み/貫井徳郎・福田和代・誉田哲也 (2012)
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