「元気でいてよ、R2-D2。/北村薫」を読んだ
R2-D2という言葉に思いっきりひっかかり、三茶のTsutayaで買って読んでみた北村薫さんの「元気でいてよ、R2-D2。」(集英社文庫)。読んでみたら悪意にあふれた短編集だった。
それぞれこんな話。
・「マスカット・グリーン」:
子供はいないけど、安定して暮らしている夫婦の"涼子"と"親明"は同じ出版社で働いていた。そんな中、親明に近づく後輩の女の子がいることを、同僚から聞かされた涼子は、その子のあとをつけていく...。
・「腹中の恐怖」:
突然、"白萩加奈"に送られた"耳川鈴江"からの手紙には、鈴江の息子"鈴丸"のことが書かれてあった。隠れて加奈の写真を撮ったり、加奈のあとをつけたりしていた鈴丸だが、加奈が結婚することを知って喜んでいると書いてあった...。
・「微塵隠れのあっこちゃん」:
小学生のころ"あつ子"は、いつも山の中で弟に落ち葉をかけてもらい、「忍法微塵隠れ!」と叫んで落ち葉の中から飛び出す遊びをしていた。40歳を過ぎた今、理不尽なクライアントに翻弄されながら、なぜか当時のことを思い出した...。
・「三つ、惚れられ」:
OLとして働く"陽子"はある日、新人の"亜梨沙"に、ダジャレ好きの隣の課の"島谷課長"のことが好きだったのかと聞かれた。そんな気持ちは毛頭ない陽子は、その場で一笑にふしたものの、それ日以来島谷から避けらるようになった...。
・「よいしょ、よいしょ」:
図書館でボランティアの仕事を始めた"瞳"は、ある日、書庫の中で古い雑誌を見つけた。その雑誌には、かつて瞳が投稿した小説が賞を取ったことが書かれていた...。
・「元気でいてよ、R2-D2」:
もうすぐ引越をする編集者の"京子"は、友達と来た喫茶店にあったコーヒーメーカーがあの"R2-D2"に似ていることに気づき、話の合間にR2-D2にも話しかけだした。そして昔一緒に働いていたディレクターの"宮崎"という男性の思い出話が始まった...。
・「さりさりさり」:
結婚式があって千葉の姉の家に泊めてもらった"詩織"は、次の日姉の夫と2人で美術館に行った。帰ってきた詩織に、姉は「蛇と蟹」の昔話を話しだした...。
・「ざくろ」:
人は60歳になると暦が一回りして、人生にひと区切りがつくと言われている。そう思っていた12歳の少女は、今自分が60歳になったのか? それとも少女のままなのか? がわからなくなってしまう...。
まずひっかかったのは、わざわざ"まえがき"で注意文が書かれていた「腹中の恐怖」。息子"鈴丸"のストーカー的な動きが不気味なうえ、その鈴丸のやることをそのまま受け入れている母親"鈴江"がさらに不気味。そんな手紙が届いたらと思うとめちゃめちゃ恐ろしい。
そしてひっかかったのは「さりさりさり」。姉が飼っていた雄猫が寝ている寝室にやってきて、ドアをさりさりさりとこすっていると思っていたのに、それが猫じゃなかったらと思うと、これまた恐ろしい。
何気ない悪意や無神経さをさらりと描いた短編集。怖かったけど、ある意味人の哀しさも描かれてて、ほのぼのとしたタイトルと表紙に完全にだまされた1冊だった。
cf.北村薫 読破 List
- 元気でいてよ、R2-D2。 (2009)
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