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Tuesday, December 04, 2012

「最後の恋 MEN'S -つまり、自分史上最高の恋。-/朝井リョウ・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・越谷オサム・白石一文・橋本紡」を読んだ

Kotaroisaka_saigonokoimens 伊坂幸太郎さんの短編を読もうということで、世田谷中央図書館で借りて読んでみた朝井リョウ・伊坂幸太郎・石田衣良荻原浩越谷オサム白石一文橋本紡 共作の短編集「最後の恋 MEN'S -つまり、自分史上最高の恋。-」(新潮文庫)について。
 これ、男性作家男7名による恋の短編集。それぞれこんなあらすじ。
 ・「僕の舟/伊坂幸太郎」:
 末期癌で余命いくばくもなく、意識もほとんどない夫の看病を続けている"若林江美"は50年前に会った初恋の男性を探し出して欲しいと"黒澤"に依頼した。その調査結果を黒澤から江美は病室で聞くことになった...。
 ・「3コデ5ドル/越谷オサム」:
 とある海外の土産物屋で働く"ジョン"は、毎日3個で5ドルのプリメリアの花を2本だけ買っていく日本からやってきた旅行者"ケイコ"のことを不思議に思っていた。そんなある日、車がエンストし困っているケイコを見かけ声をかけるが...。
 ・「水曜日の南階段はきれい/朝井リョウ」:
 M大に入学して、MUMCという音楽サークルに入り、ライヴ活動をすることが夢の高3の"神谷光太郎"。そんな光太郎は、毎週水曜日に校舎の南階段を掃除している"荻島夕子"と友達になった。そして英語が得意な夕子は、英作文を教えてもらうことになった...。
 ・「イルカの恋/石田衣良」:
 "あゆみ"は激務の会社勤めで身体を壊し、社会復帰へのリハビリを兼ねて、近くのカフェ"DOLPHIN"で働く始めることになった。そのカフェは、昼はマスターとして"小山田裕介"がしきりし、夜はバーとして美人の"千尋"がしきっていた。この裕介と千尋の間には、過去からのつながりがあった...。
 ・「桜に小禽/橋本妨」:
 デザイナーの"藤臣"と同じ事務所に勤めていた"塔子"は、彼と3年間生活を共にしたが、二人は別れることに。別々の時間に引越業者が2人の荷物を引き取りにくることになっており、そこで最後の時間を過ごすことに...。
 ・「エンドロールは最後まで/荻原浩」:
 結婚しないで生きていこうと決心した38歳の"千帆"は、ひとりで映画を観た後、牛丼屋で"渡辺裕二"と出会い、だんだんとひかれていく。裕二は医者のようで、アフリカに病院をつくるプロジェクトに参加すると言い出した...。
 ・「七月の真っ青な空に/白石一文」:
 捨てられた犬猫の里親探しのボランティア団体で働いていた"連"は、猫を紹介したイラストレイターの"徳永"と知り合った。しかし、徳永には7年前、自分の過失で妻を死亡させた過去があった...。

 サブタイトルで「自分史上最高の恋」と書いてあるので、どんだけこっ恥ずかしい話ばかりかと思ってたけど、読んでみるとどの話も淡々としていて、静かで、でもじわっと熱い話ばかりだった。
 で、読みたかった伊坂幸太郎さんの「僕の舟」は、伊坂幸太郎さんらしい布石と会話の妙にあふれていたんだけど、個人的に特によかったのは、越谷オサムさんの「3コデ5ドル」と朝井リョウさんの「水曜日の南階段はきれい」。
 まずは「3コデ5ドル」。外国人のお土産屋が旅先で恋人を亡くした女性に恋をする話。中身はとても重いんだけど、言葉が通じない2人がわからなくても気持を伝えていき、ふと通じる感じがどこかいい。文体もどこかユーモラスでさらっと読めて、じわっと響いた。
 そして、「水曜日の南階段はきれい」。これ、学校でゲリラライブをやっていた少年が卒業式の当日、交換した卒業文集を通じて知った少女の思いと夢に気づいたラストシーンはまじでジーンとした。思春期の淡い恋心が伝わって、懐かしかったりしつつもいい読後感にひたれた。
 「最後の恋」というタイトルはどーもダメなんだけど、情けない男心にあふれて、読んでみてまずまずよかった短編集だった。

cf.伊坂幸太郎 読破 List
- オーデュボンの祈り (2000/2003)
- ラッシュライフ (2002/2005)
- 陽気なギャングが地球を回す (2003/2006)
- 重力ピエロ (2003/2006)
- アヒルと鴨のコインロッカー (2003/2006)
- チルドレン (2004/2007)
- グラスホッパー (2004/2007)
- 死神の精度 (2005/2008)
- I LOVE YOU/伊坂幸太郎・石田衣良・市川拓司・中田永一・中村航・本多孝好 (2005/2007)
- 魔王 (2005)
- 魔王(文庫) (2008)
- 砂漠 (2005/2008)
- 終末のフール (2006)
- 陽気なギャングの日常と襲撃 (2006)
- フィッシュストーリー (2007)
- 絆のはなし/伊坂幸太郎x斉藤和義 (2007)
- ゴールデンスランバー (2007)
- 実験4号 -後藤を待ちながら (2008)
- Re-born はじまりの一歩/伊坂幸太郎・瀬尾まいこ・豊島ミホ・中島京子・平山瑞穂・福田栄一・宮下奈都 (2008)
- モダンタイムス (2008)
- あるキング (2009)
- SOSの猿 (2009)
- オー!ファーザー (2010)
- バイバイ、ブラックバード (2010)
- 『バイバイ、ブラックバード』をより楽しむために ポスタル・ノベル編 (2010)
- マリアビートル (2010)
- 文藝別冊 総特集 伊坂幸太郎 (2010)
- 3652-伊坂幸太郎エッセイ集- (2010)
- 仙台ぐらし (2012)
- PK (2012)
- Happy Box/伊坂幸太郎・山本幸久・中山智幸・真梨幸子・小路幸也 (2012)
- あの日、君と Boys/ナツイチ制作委員会(編)・伊坂幸太郎(著)・井上荒野(著)・奥田英朗(著)・佐川光晴(著)・中村航(著)・西加奈子(著)・柳広司(著)・山本幸久(著) (2012)
- 夜の国のクーパー (2012)
- しあわせなミステリー/伊坂幸太郎・中山七里・柚月裕子・吉川英梨 (2012)
- 最後の恋 MEN'S -つまり、自分史上最高の恋。-/朝井リョウ・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・越谷オサム・白石一文・橋本紡 (2012)

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