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Monday, January 28, 2013

「キャンセルされた街の案内/吉田修一」を読んだ

Shuichiyoshida_cancelsareta ちょいちょい読んでる作家のひとり、吉田修一さん。最近も読んだ「平成猿蟹合戦図」、「横道世之介」に続き、これまた世田谷中央図書館で借りて読んでみた「キャンセルされた街の案内」(新潮文庫)について。
 これ、10編からなる短編集。それぞれこんな話。
 ・「日々の春」:
 新入社員の何気ない仕草がなにかと気になる先輩OLの話。そんな2人が休日出勤して...。
 ・「零下五度」:
 韓流好きの女性が、一人で韓国旅行する。ホテルの部屋に到着し、なんてことないことをきっかけにして泣き始めた。しかも鏡に映るような場所を選んで自分の泣く姿を見ながら...。
 ・「台風一過」:
 台風の日に過ごす家のないの少年。ゲームセンターで出会った人に助けてもらったり、雨の中学校のプールに忍び込んだり、公園のトイレで雨宿りしたり...。
 ・「深夜二時の男」:
 彼女がアパートに越してきた時に会った隣の部屋の男は、悪そうな人じゃなかっし、聞こえてくる生活音は彼女にとって安らぎだった。そしてある日の深夜二時。隣の男が彼女の部屋に忍び込んできた...。
 ・「乳歯」:
 同棲女性に軽んじられながら、彼女の連れ子の子守りを惰性で続ける現場作業員の男。住んでるアパートの近くで映画の撮影が始まった...。
 ・「奴ら」:
 写真の専門学校に通う男が満員電車の中で痴漢に遭う。男はされるがままに何もできなかった自分に猛烈に腹が立つ...。
 ・「大阪ほのか」:
 九州出身の2人の中年男が大阪で再会する。1人は高卒で大阪本社転勤になり、もう1人は九州で法事を済ませ、大阪に立ち寄った。そこにもう1人、お見合いで大阪に来ている男も合流した...。
 ・「24 Pieces」:
 親友の彼女と浮気をする。親友を裏切ることと恋人を裏切ることと、どちらがつらいのだろうかという話...。
 ・「灯台」:
 17歳の少年と、20年後の男が一緒に歩きながら、話をする。「もし俺にしてほしいこととがあれば聞くよ」と少年は男に話す...。
 ・「キャンセルされた街の案内」:
 故郷長崎から無職の兄が一人暮らしで小説家志望の弟の家に転がり込んできた。彼らは長崎 軍艦島の対岸で育った兄弟。兄の存在が打ち捨てられた離島の光景、そして薄汚れた幼い記憶を弟の心に蘇らせる...。

 これ、場所や情景が浮かび、その瞬間瞬間を切り取っていくことには成功しているんだけど、どの話もストーリーに起承転結がなく、特に完結がないまま終わってしまうものばかり。正直消化不良感たっぷりの読後印象。それぞれの話をもう少しふくらまして、もう一度世に出して欲しいかなと思ったりして...。
 ともかく、心象風景を通じて、人の心に起きるざらつきを感じさせる短編集だった。

cf. 吉田修一 読破 List
- パレード (2002)
- パーク・ライフ (2002)
- 日曜日たち (2003)
- ランドマーク (2004)
- 春、バーニーズで (2004)
- 静かな爆弾 (2006)
- 初恋温泉 (2006)
- 悪人 (2007)
- あの空の下で (2008)
- キャンセルされた街の案内 (2009)
- 横道世之介 (2009)
- 平成猿蟹合戦図 (2011)
- 太陽は動かない (2012)

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