「屍者の帝国 The Empire of Corpses/伊藤計劃・円城塔」を読んだ
「虐殺器官」や遺作「ハーモニー」などを読んできて、読後のその強烈な圧迫感にやられた伊藤計劃氏。で、亡くなった伊藤計劃氏が遺した約30枚の未完成プロローグ原稿を引き継いで盟友・円城塔氏が完結させた「屍者の帝国 The Empire of Corpses」(河出書房新社)。世田谷中央図書館で借りて読んでみた。ふぅ...。
こんなあらすじ。19世紀末の世界では、フランケンシュタインといったクリーチャ技術は全欧に拡散し、"屍者"たちは労働用から軍事用まで幅広く活用されていた。ある日の放課後、ロンドンの大学の医学生だった主人公のワトソンは教授に呼び出され、ユニバーサル貿易の建物へと連れて行かれた。そこはまるで迷路のように廊下は複雑に入り組んでいて、警備員は屍者という場所だった...。
これ、英国諜報員となったワトソンは密命を受け、軍医としてボンベイに渡り、「屍者の王国」へと向かうという話。
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「生者と死者を分かつものは何かね、ワトソン君」
そう、霊素の有無。俗に言う魂(スピリット)というやつだ。実験で確認されているところによると、人間は死亡すると生前に比べ体重が0.75オンス、 21グラムほど減少する。これがいわゆる"霊素(スペクター)"の重さだと考えられている。
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最初読み出した頃は、屍者がどのように意識を復活させていく話かと思ったけど、舞台がアフガニスタン、ボンベイ、日本、アメリカ、そしてイギリスに移っていくにつれて、人が持つ"意識という領域"とは別に、"無意識という領域"があり、無意識に基づいてどう行動させられるのかという話が綿密に描写されていった物語かと思う。
ともかく、盟友・円城塔氏が情熱を持って未完の大作を完成させたという、彼の誠意が思いっきり伝わった作品。丁寧に読めば読むほど、その圧倒的な情報量とストーリーにやられてしまった。あらためて伊藤計劃氏の逝去は本当に残念です。ご冥福をお祈りします。
cf. 伊藤計劃 読破 List
- 虐殺器官 (2007)
- ハーモニー (2008)
- The Indifference Engine (2012)
- 屍者の帝国 The Empire of Corpses/伊藤計劃・円城塔 (2012)
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