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Friday, March 22, 2013

「さよなら渓谷/吉田修一」を読んだ

Shuichiyoshida_sayonarakeikoku ここ最近集中的に読んでいる吉田修一さん。三茶TSUTAYAで買って読んでみた「さよなら渓谷」(新潮文庫)について。
 こんなあらすじ。緑豊かな桂川渓谷にほど近いさびれた市営団地に暮らす"立花里美"の4歳の息子が行方不明になり、渓谷で遺体で発見されるという事件が起き、新聞記者達が現場に張りついていた。その後殺害容疑で逮捕された里美は、里美の隣家に妻とふたりで暮らす"尾崎俊介"との関係をほのめかす。そんな中、取材を続ける記者"渡辺"は、俊介が10数年前の大学野球部在籍時、他の部員達と集団レイプ事件を起こしていた事実をつかむ...。
 これ、幼児殺害事件から一転して、集団レイプ事件に変わっていく中で描かれた悲劇の連鎖の物語。呪わしい過去が暴かれていく中、その過去がつないだ男女の関係が明らかになっていく。なぜ加害者の男と被害者の女性が寄り添って暮らしているのかが、この小説の最大の見せ場だと思う。
 それにしても、この幼児殺害事件は、2006年に秋田で起きた畠山鈴香による児童連続殺害事件を想起させるもの。あのワイドショーをにぎわかした報道とか、畠山鈴香の供述や高校時代に受けたいじめとかも痛々しいものだった。また同じく、運動部員によるレイプ事件も、ずっと後を絶たない。
 吉田修一さんが書くさわやかな小説もいいけど、重苦しい雰囲気の小説もいい。ほんとうまい作家だと思う。

cf. 吉田修一 読破 List
- パレード (2002)
- パーク・ライフ (2002)
- 日曜日たち (2003)
- ランドマーク (2004)
- 7月24日通り (2004)
- 春、バーニーズで (2004)
- 初恋温泉 (2006)
- 悪人 (2007)
- 静かな爆弾 (2008)
- さよなら渓谷 (2008)
- あの空の下で (2008)
- キャンセルされた街の案内 (2009)
- 横道世之介 (2009)
- 平成猿蟹合戦図 (2011)
- 太陽は動かない (2012)

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