「赦す人/大崎善生」を読んだ
ほとんどの小説を読み尽してしまった大崎善生さんの作品。で、今回は去年2012年に刊行された団鬼六の波乱万丈の生涯を描いたノンフィクション「赦す人」(新潮社)を読んでみた。
これ、SM作家である団鬼六の壮絶で痛快な人生を描いたノンフィクション長編小説。夜逃げ、倒産、そしてふたたび栄華を迎え、浪費をし、また夜逃げ。伝説の真剣師と交流し、商品相場に大金を振り込み、金を持ち逃げされ、よもやの妻の不倫に苦しみ、ヤクザと刑事と同時につきあい、脳梗塞、慢性腎不全による人工透析、食道がんとなるが手術を拒否して遊びまくり、その全てから小説を産んできた。そんな団鬼六の懐にに飛び込んだ大崎善生さんの渾身で愛情にあふれた1冊。
絶頂期には月に500枚のエロ小説を書きまくり、5億円ともいわれる御殿に住んでいた団鬼六。「遊んで、遊びつくした。それでも全然、足りない...。」死期が迫ってきたときにこんな言葉が残せる団鬼六ってハンパない。裏切られても、騙されても最後は赦す団鬼六の器のデカサがハンパない。欲望に忠実に生きるって実は大変だってことをこの本を読んで思い直した。
「快楽なくして何が人生」って言えることが心からうらやましい。人を引き寄せる魅力にあふれ、人生の濃度が濃い"異端の文豪"。ほんとにおもしろかった。
cf. 大崎善生 読破 List
- 将棋の子 (2001)
- パイロットフィッシュ (2001)
- アジアンタムブルー (2002)
- 九月の四分の一 (2003)
- ドナウよ、静かに流れよ (2003)
- ロックンロール (2003)
- 孤独か、それに等しいもの (2004)
- 別れの後の静かな午後 (2004)
- ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 (2005)
- 優しい子よ (2006)
- タペストリーホワイト (2006)
- 傘の自由化は可能か (2006)
- スワンソング (2007)
- ディスカスの飼い方 (2009)
- 存在という名のダンス (2010)
- Railway Stories (2010)
- ランプコントロール (2010)
- ユーラシアの双子 (2010)
- 西の果てまで、シベリア鉄道で -ユーラシア大陸横断旅行記 (2012)
- エンプティスター (2012)
- 赦す人 (2012)
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