「最後の息子/吉田修一」を読んだ
ここ最近集中的に読んでいる吉田修一さん。これも三茶TSUTAYAで買って読んでみた「最後の息子」(文春文庫)について。
これ、3つの青春小説が収録されている。それぞれこんな話。
・「最後の息子」:
ゆったりと本を読んで過ごしたいからと新宿のオカマ「閻魔ちゃん」と同棲し、時々はガールフレンドとも会いながら、気楽なモラトリアムの日々を過ごしている「ぼく」。そんなぼくは、ビデオ日記をを撮り続け、怠惰な生活を続けていた...。
・「破片」:
一年ぶりに東京から故郷に帰ってきた兄"大海"と実家の酒屋を継いだ弟"岳志"。大海は東京での暮らしがあまりパッとせず、岳志はスナックで知り合った女性に対して、ストーカーまがいの行為を続けていた...。
・「water」:
"凌雲"、"浩介"、"拓次"、"圭一郎"の高校水泳部員が長崎県大会のリレーで勝って、全国大会への出場を目指し、水泳一色の日々を過ごしていた。亡くなった兄に憧れ、水泳を始めた主将の凌雲は、圭一郎の彼女"藤森さん"に恋をしていたが、その圭一郎は浩介に同性愛の感情を抱いているらしい...。
いずれの話も、ちょっとしたイザコザやストレスやひがみやコンプレックスを持ち、どこか情緒が不安定で、それが日々の日常に現れている。この3つの話の中でも爽やかな青春小説である「water」であっても、兄の死で壊れてしまった母という現実から逃避しようとしている。きっとこの短編集で言いたかったことは、現実から目を背けた青春というものを淡々と描きたかったと思う。書籍のオビには「爽快感200%、とってもキュートな青春小説!」と書いてあるけど、全然キュートではない青春小説だった...。
cf. 吉田修一 読破 List
- 最後の息子 (1999)
- パレード (2002)
- パーク・ライフ (2002)
- 日曜日たち (2003)
- ランドマーク (2004)
- 7月24日通り (2004)
- 春、バーニーズで (2004)
- 初恋温泉 (2006)
- 悪人 (2007)
- 静かな爆弾 (2008)
- さよなら渓谷 (2008)
- あの空の下で (2008)
- キャンセルされた街の案内 (2009)
- 横道世之介 (2009)
- 平成猿蟹合戦図 (2011)
- 太陽は動かない (2012)
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