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Monday, May 06, 2013

「路(ルウ)/吉田修一」を読んだ

Shuichiyoshida_lu ここ最近集中的に読んでいる吉田修一さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「路(ルウ)」(文藝春秋)について。
 こんな話。1999年、台湾の台北・高雄間の台湾高速鉄道を日本の新幹線が走ることになり、入社4年目の商社員"多田春香"は台湾への出向が決まった。春香には大学時代に初めて台湾を訪れた6年前の夏、"エリック"という台湾人青年とたった一日だけすごし、その後連絡がとれなくなってしまった彼との運命的な思い出があった。台湾と日本の仕事のやり方の違いに翻弄される日本人商社員"安西"、車輛工場の建設をグアバ畑の中から眺めていた台湾人学生"陳威志"、台湾で生まれ育ち終戦後に日本に帰ってきた日本人老人"葉山勝一郎"、そして日本に留学し建築士として日本で働く台湾人青年"劉人豪"。台湾新幹線開通に向けて、それぞれの思いが集約していく...。
 日本と台湾の大プロジェクト"台湾新幹線"をめぐり、それぞれの人々のドラマを中心に日本と台湾の間に育まれた個人の温かくて深い絆を描いた長編作。最初はバラバラに描かれていた個人のドラマや思いや苦しみや喜びが、90分で走る台湾新幹線の着工から開業に向けて集約していくんだけど、後半に向けての読んでるこっちのテンションがあがっていく。
 特に"多田春香"というひとりの女性が台湾という異国において、新幹線開通という仕事に忙殺されて、東京に残した恋人に心を痛め、そして自分の人生を見出していくんだけど、その彼女の成長物語がいい。登場する人物が最後にはそれぞれの「路(ルウ)」を見出していくのがいい。そして、南国台湾の気候や季節感や自然や街並や温泉や食べ物や暮らす人々が丁寧に描かれているところがいい。
 自分が台湾に行ったのは、2005年7月2011年4月の2回の出張だけ。そんな台湾経験だけど、夜市の暑さに圧倒されたし、ガジマルの樹は黒々としていたし、かき氷のおいしさに感動したもの。また台湾に行きたくなった温かい絆の物語だった。

cf. 吉田修一 読破 List
- 最後の息子 (1999)
- パレード (2002)
- パーク・ライフ (2002)
- 日曜日たち (2003)
- ランドマーク (2004)
- 7月24日通り (2004)
- 春、バーニーズで (2004)
- ひなた (2006)
- 初恋温泉 (2006)
- 悪人 (2007)
- 静かな爆弾 (2008)
- さよなら渓谷 (2008)
- あの空の下で (2008)
- キャンセルされた街の案内 (2009)
- 横道世之介 (2009)
- 平成猿蟹合戦図 (2011)
- 太陽は動かない (2012)
- 路(ルウ) (2012)

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