「沈黙の町で/奥田英朗」を読んだ
それなりに読みまくってきた奥田英朗さんの小説。今回は世田谷中央図書館で借りた最新刊「沈黙の町で」(朝日新聞出版庫)について。
こんなあらすじ。中学2年生の"名倉祐一"が学校の部室の屋上から転落し、死亡した。屋上には5人の生徒の足跡が残されていたが、やがて背中のつねられた痕や携帯の履歴から祐一がいじめを受けていたことが明らかになり、少年法上14歳になっていた同級生2人が逮捕され、13歳の2人が補導される。閑静な地方都市で起きた1人の中学生の死をめぐり、小さな町に静かな波紋がひろがっていく...。
これ、被害者家族や加害者とされる少年達とその親、新聞記者、学校、教育委員会、警察などさまざまな視点から描き出される長編サスペンス小説。単なるいじめが招いた事件を謎を解くといったものではなく、いろいろな立場や年代の人が出てきて、多角的な視点から徐々に真相を明らかにしていくというもので、とっても読み応えと奥行きのある作品だった。被害者と加害者の母親達の苦しみや焦りや憔悴はほんとにリアルだったし、中学生達の無邪気な残酷さはほんとに恐ろしかった。そして最後は読者に判断をまかされた感じで終わってしまったけど、それが逆になんとも言えない余韻を残してくれたと思う。
ともかくどんなホラー小説にもかなわない恐ろしさにあふれた1冊だった。
cf. 奥田英朗 読破 List
- B型陳情団 (1990)
- ウランバーナの森 (1997)
- 最悪 (1999)
- 邪魔 (2001)
- 東京物語 (2001)
- イン・ザ・プール (2002)
- 延長戦に入りました (2002)
- マドンナ (2002)
- 真夜中のマーチ (2003)
- 空中ブランコ (2004)
- サウスバウンド (2005)
- ララピポ (2005)
- ガール (2006)
- 町長選挙 (2006)
- 家日和 (2007)
- オリンピックの身代金 (2008)
- 用もないのに (2009)
- 無理 (2009)
- 純平、考え直せ (2011)
- 我が家の問題 (2011)
- あの日、君と Boys/ナツイチ制作委員会(編)・伊坂幸太郎(著)・井上荒野(著)・奥田英朗(著)・佐川光晴(著)・中村航(著)・西加奈子(著)・柳広司(著)・山本幸久(著) (2012)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- 沈黙の町で (2013)
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