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Friday, September 13, 2013

「月と蟹/道尾秀介」を読んだ

Shusukemichio_tsukitokani ここ最近、ガンガン読んでる道尾秀介氏さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「月と蟹」(文春文庫)について。
 こんなあらすじ。鎌倉の海辺の町が舞台。山中の秘密の場所で小学生の"慎一"と"春也"はヤドカリを神様に見立てた"ヤドカミ様"という願い事遊びを考え出す。100円欲しい、いじめっ子をこらしめたい...。捕まえたヤドカリを焼きながら願い事をするという無邪気な儀式ごっこはいつしか切実な祈りに変わり、やり場のない祈りが周囲の大人を巻き込み、そして母のない少女"鳴海"を加えた3人の関係も揺らいでゆく...。
 これ、鎌倉の海や鬱蒼とした山の中の秘密の場所での3人の子供たちの秘密の遊びがエスカレーションしていく少年小説。大人たちの男女の隠し事、それを釈然しない思いで感じる子供たち、そして周囲の子供から受けるいじめや親から受ける虐待にまでおよび、無邪気で残酷な儀式の様子が、みずみずしくもひたすら陰湿に描かれている。
 子供のときに誰もが持っていた純粋さとか残酷さとか独占欲とかが見事に描写されていて、凄まじい圧迫感と焦燥感が伝わってきた。確かに自分が小学生の頃の遊びは、トンボの羽をむしったり、捕まえ過ぎたカナブンを花瓶にいれて放置したり、水槽にいれたザリガニが子供を産み過ぎて一杯になり、それを家の裏に放置したり、亀の甲羅に落書きしたり、自転車の空気入れをカエルに差してお腹を破裂させたり...と本当に残酷な遊びをやっていたもの。あのときに腐ったザリガニの匂いとかを、この小説を読んで思い出した。こういった暗い出来事を経て大人になっていくんだけど、あの頃のモヤモヤした気持ちがリアルに蘇ってきた。
 あまりお勧めできる小説ではないけど、暗くて哀しい深い余韻が残る1冊でした。

cf. 道尾秀介 読破 List
- 向日葵の咲かない夏 (2005)
- 片眼の猿 -One-eyed monkeys- (2007)
- ソロモンの犬 (2007)
- ラットマン (2008)
- カラスの親指 by rule of CROW'S thumb (2008)
- 鬼の跫音 (2009)
- 球体の蛇 (2009)
- 光媒の花 (2010)
- 月の恋人-Moon Lovers- (2010)
- 月と蟹 (2010)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- (2012)
- 笑うハーレキン (2013)

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