「共震/相場英雄」を読んだ
面白かった相場英雄さんの「震える牛」。世田谷中央図書館で借りて、続いて読んでみた「共震」(小学館)について。
こんなあらすじ。大和新聞東京本社の遊軍記者である"宮沢賢一郎"は、東日本大震災後、志願して仙台総局に異動する。沿岸被災地の現状を全国の読者に届けるため、「ここで生きる」というコラムを立ち上げた。そんななか、宮沢とも面識のある県職員"早坂順也"が、東松島の仮設住宅で毒害された。被害者の早坂は県職員という枠を越えて、復興のために力を尽くしてきた人物だった。早坂は亡くなる直前まで、被災地の避難所の名簿を調べていたという...。
これ、東日本大震災で起きた殺人事件を追うミステリーなんだけど、実態は東日本大震災後の現実を克明に描いたルポタージュなノンフィクション作品。義捐金の行方やボランティア、震災詐欺...自分の私腹を肥やそうとする復興利権に群がるシロアリ達の実態を追っていきつつ、殺害のトリックや容疑者を完全自供させるミステリーとしても引き込まれる。それ以上に、遅々として進まない復興の実態が克明に描かれ、それでも少しずつ前に進んでいる東北の状況をあらためて教えてもらった。「せめて寄り添ってください」という作者の気持ちがヒシヒシと伝わってきた。
それにしても、ラストに「共に震える」という「共震」というタイトルの意味がわかって、ジーンとしてしまった。311を風化してはいけない。
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