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Wednesday, January 29, 2014

「儚い羊たちの祝宴/米澤穂信」を読んだ

Honobuyonezawa_hakanaihitsujitachin 桜新町Tsutayaでひっかかった米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴」(新潮文庫)。ちょっと書いてみる。
 教養と品格を備えた上流階級のお嬢様たちが集う読書サークル"バベルの会"をめぐる5つの物語。それぞれこんなあらすじ。
 ・「身内に不幸がありまして」:
 使用人として孤児院から"丹山家"に引き取られた"村里夕日"は、丹山家の娘"吹子"について共に年月を過ごしていた。大学生となった吹子は"バベルの会"に入り、その夏合宿の2日前、丹山家の息子"宗太"が屋敷を襲撃するという惨劇は起きた。そして、その翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害された...。
 ・「北の館の罪人」:
 "六綱家"前当主の愛人だった亡き母の遺言に従い、"内名あまり"は六綱家の屋敷に身を寄せたが、現当主の"光次"から屋敷の別館"北の館"に小間使いとして住むように言いつけられ、そこに住む長男"早太郎"の世話と監視を命じられた。そこであまりは、早太郎からビネガーや画鋲、糸鋸といった買い物を頼まれる...。
 ・「山荘秘聞」:
 目黒の貿易商"辰野家"に仕える屋島守子は、辰野の妻のために八垣内に建てられた別荘"飛鶏館"の管理を任されていた。飛鶏館に魅了されていった守子は、館の維持管理に精を出していたが、辰野の妻の病死により用が無くなった飛鶏館には一人も客は寄っていなかった。そんなある冬の日、山を見廻った守子は崖から落ちた登山者"越智"を救出し、館で介抱した...。
 ・「玉野五十鈴の誉れ」:
 "小栗家"の長女"純香"は、家の絶対権力者である祖母から"玉野五十鈴"という従者を与えられた。主従関係ながらも純香と五十鈴は心を許しあい、教養と見識としたたかさを教えてくれる五十鈴の存在は、純香にとってかけがえのないものとなった。そして、祖母を言い包め五十鈴と共に大学に進学し、"バベルの会"に入会した純香だったが、父の伯父が強盗殺人を犯してしまう...。
 ・「儚い羊たちの晩餐」:
 会費の未払いにより"バベルの会"を除名された"大寺鞠絵"は、家同士のコネ作りと理解した父親から倍の会費を用意してもらったが、再び会に戻ることはできなかった。そんなある時、厨娘と呼ばれる料理人"夏"が大寺家に雇われることになった...。

 これ、どの話も優雅で甘美な流れで物語が進むんだけど、どこか上流社会に潜む嫌みと妬みと腹黒さが横たわっていて、最後は邪悪で残酷な結末を迎えるというものばかり。ミステリーの体はしてるけど、実態は暗黒なホラー小説。旧家にひそむ暗部を描いてるあたりは、どこか横溝正史さんへのオマージュを感じる。こんな寒い冬に読むホラーもなかなかよいです。

cf. 米澤穂信 読破 List
- ボトルネック (2006)
- インシテミル (2007)
- 儚い羊たちの祝宴 (2008)

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