「空の冒険/吉田修一」を読んだ
去年から最近集中的に読んでいる吉田修一さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「空の冒険」(集英社文庫)について。
これ、既刊「あの空の下で」同様に、ANA機内誌"翼の王国"に連載された12編の短編小説と様々な国をめぐった11編のエッセイが収められた一冊。
まず短編のほうですが、「女が階段を上がる時」、「緑の光線」、「居酒屋」、「火まつり」、「オール・アバウト・マイ・マザー」、「山の音」、「恋人たちの食卓」、「ドライ・クリーニング」、「青の稲妻」、「赤い橋の下のぬるい水」、「ほえる犬は噛まない」、「桜桃の味」の12編。個人的によかったのは、大学の後輩から年の瀬になると届く地元の海の幸に後輩との日々を思い出し、ひさびさに会いに行こうとする「火まつり」、シーズンオフの民宿でひとり週末過ごす主人公が家族とかに思いをはせる「山の音」、香港出身の彼女の実家で国際色豊かな食卓を囲む「恋人たちの食卓」、会社がある千駄ヶ谷まで自転車で通う主人公がふと寝る前に決めた決意を思い出す「青の稲妻」、そして7年越しの恋人に急に別れを告げられひとりで訪れたソウルでの旅を描いた「ほえる犬は噛まない」あたり。どの話もさりげないけど、その当人にとっては大事なことで、どこか共感できるものばかり。
そしてエッセイの方は、作者である吉田修一さんが仕事やプライベートで訪れた国内外で感じたことがさりげなく書かれている。特に小説「悪人」の舞台となった福岡を作者がめぐる話と、映画「悪人」での長崎県五島列島の大瀬崎灯台の撮影シーンに立ち会った話はその情景が浮かび、なかなか興味深かった。
人生の一場面を切り取った短編と、どこかに旅に出たくなるエッセイ。さらっと読めてひっかかった1冊だった。
cf. 吉田修一 読破 List
- 最後の息子 (1999)
- パレード (2002)
- パーク・ライフ (2002)
- 日曜日たち (2003)
- 東京湾景 (2003)
- ランドマーク (2004)
- 7月24日通り (2004)
- 春、バーニーズで (2004)
- ひなた (2006)
- 女たちは二度遊ぶ (2006)
- 初恋温泉 (2006)
- うりずん/吉田修一・佐内正史 (2007)
- 悪人 (2007)
- 静かな爆弾 (2008)
- さよなら渓谷 (2008)
- あの空の下で (2008)
- 元職員 (2008)
- キャンセルされた街の案内 (2009)
- 横道世之介 (2009)
- 空の冒険 (2010)
- 平成猿蟹合戦図 (2011)
- 太陽は動かない (2012)
- 路(ルウ) (2012)
- 愛に乱暴 (2013)
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