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Wednesday, February 19, 2014

「鏡の花/道尾秀介」を読んだ

Shusukemichio_kagaminohana ここ最近、ガンガン読んでる道尾秀介氏さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「鏡の花」(集英社)について。
 これ、鏡というパラレルワールドを描いた連作小説。それぞれこんなあらすじ。
 ・「やさしい風の道」:
 もうすぐ8歳になる"章也"は、ひとりでバスに乗り、ある一軒家を目指していた。その家はかつて家族が住んでいた家で、その家に行けば、章也が生まれる1年前に死んだ姉の死の謎がわかると思っていた。そしてその家にたどり着くと、そこには"瀬下"という老人がひとりで住んでいた...。
 ・「きえない花の声」:
 58歳になる"瀬下栄恵"は、息子"俊樹"が小学生だった18年前に、夫を水の事故で亡くしていた。林業試験場に勤めていた夫は、あの日なぜ海に行ったのか? 同じ林業試験場で働く"木島結乃"との関係はなんだったのか? 栄恵は18年前の謎とわだかまりを抱えて生きてきたのだった...。
 ・「たゆたう海の月」:
 今年の春、小さい女の子がベランダから落ちて亡くなったという家に、"瀬下"とその妻の"栄恵"は引っ越しをしてきた。そんな中、彼らの息子の"俊樹"が崖から転落して亡くなってしまった。実は亡くなる前に俊樹から、ねじ曲がった黒松の林を風に逆らって飛ぶ2匹の蝶が描かれた絵はがきは届いていた。俊樹はいったい何を伝えたかったのか?...。
 ・「つめたい夏の針」:
 高1の"翔子"は、親友の"真絵美"の弟"直弥"と、誰にも言わず付き合い始めていた。7年前に死んだ翔子の弟"章也"は、生きていれば直弥と同じ中学2年だった。章也が生きてれいればこうだっただろうなと思いつつ、翔子は初めて弟の死と向き合いだした...。
 ・「かそけき星の影」:
 "飯先"と"木島結乃"夫婦の子供"葎"は、"瀬下"と"栄恵"夫婦の子供の"俊樹"と結婚していた。そんな中、葎の母である結乃の血液病が再発してしまう。消えゆく命を前にして、"真絵美"と"直弥"姉弟の両親が亡くなった火事の原因が明らかになっていく...。
 ・「鏡の花」:
 江戸時代から製鏡の伝統がある町の民宿「菱花」には、大広間の真ん中にイチョウの木が立っていた。そんな民宿に、2組11人の客がやってくる。1組は、夜明けにしか見えない真夏のオリオン座を観るために、"翔子"と"章也"姉弟、"真絵美"と"直弥"姉弟の4人。もう1組は、転勤が決まった"俊樹"と"葎"と2歳の"創介"の3人家族と、それぞれの両親である"瀬下夫妻"と"飯先夫妻"の7人。転勤で孫の"創介"になかなか会えなくなる瀬下とすぐ会えるようになる飯先の間に生まれたわだかまりを解消するためだった。そんな中、民宿の子供"美代"が亡くなった祖父に会うために、姿を消してしまう...。

 この6つの話は、登場人物はすべて同じだんだけど、毎回設定や役割が変わり、誰かが亡くなっているというもの。どれも選択した小さな行為の結果、世界や人生が変わってしまうというもので、6つの世界がお互い反応し、呼応し合っているのが面白い。あまりの設定の変化に頭が混乱するけど、それぞれ独立した話として読み込んでいくと、ストンと全体が腑に落ちて、体験したことのない群像劇として楽しめた。道尾秀介氏さんらしいホラー的で情景的な描写もあり、さすがの筆力に驚きました。いやー、面白かった。

cf. 道尾秀介 読破 List
- 向日葵の咲かない夏 (2005)
- シャドウ (2006)
- 片眼の猿 -One-eyed monkeys- (2007)
- ソロモンの犬 (2007)
- ラットマン (2008)
- カラスの親指 by rule of CROW'S thumb (2008)
- 鬼の跫音 (2009)
- 花と流れ星 (2009)
- 球体の蛇 (2009)
- 光媒の花 (2010)
- 月の恋人-Moon Lovers- (2010)
- 月と蟹 (2010)
- カササギたちの四季 (2011)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- (2012)
- ノエル-a story of stories- (2012)
- 笑うハーレキン (2013)
- 鏡の花 (2013)

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» 「鏡の花」道尾秀介 [粋な提案]
製鏡所の娘が願う亡き人との再会。少年が抱える切ない空想。姉弟の哀しみを知る月の兎。曼珠沙華が語る夫の過去。少女が見る奇妙なサソリの夢。老夫婦に届いた絵葉書の謎。ほんの小さな行為で、世界は変わってしまった。それでも―。六つの世界が呼応し合い、眩しく美しい光を放つ。まだ誰も見たことのない群像劇。 ・第一章 やさしい風の道 ・第二章 きえない花の声 ・第三章 たゆたう海の月 ・第四章 つめ...... [Read More]

Tracked on Friday, December 18, 2015 13:14

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