「架空通貨/池井戸潤」を読んだ
今年、集中的に読んでいる作家のひとり池井戸潤さん。今回は世田谷中央図書館で借りて読んでみた「架空通貨」(講談社文庫)について。
こんな話。会社のリストラ方針に嫌気がさし退職した元商社マンの社会科教師の"辛島"のもとに女子高生"麻紀"が訪ねてきたが、その翌日麻紀の父親が経営する"黒沢金属工業"が不渡りを出し破綻してしまう。そして麻紀は父親の会社を救うため、取引先の"田神亜鉛"に乗り込んだが、教え子のひたむきな姿に心を打たれた辛島は、麻紀を手助けをすることになった。その田神亜鉛は、社債という形で"田神札"という独自の通貨を発行し、半ば強制的に資金を調達するため、下請け代金などを田神札で支払っていた...。
これ、お金という魔物をテーマに、お金がすべてという資本主義の価値観がいかに人々を惑わし、翻弄し、破滅に導くかを描いた経済犯罪小説。このタイトルにもなった"架空通貨"とは、長野の田神亜鉛という企業が発行している社債のこと。田神亜鉛が企業城下町におけるピラミッドの長として、振興券という名前の社債は紙幣と同じよう流通させられている。その実態を通して、下請けに対する企業の横暴、脅迫、権力が描かれ、さらには暴力団のマネーロンダリングまで発展する。まさにスケールの大きい企業犯罪小説になっていた。
通貨や経済に疎い自分にとっても、すっかりハマってしまった。いやー凄い小説だった。
cf. 池井戸潤 読破 List
- 架空通貨 (2003)
- 株価暴落 (2004)
- 鉄の骨 (2009)
- 民王 (2010)
- 下町ロケット (2010)
- ようこそ、わが家へ (2013)
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