「熱帯魚/吉田修一」を読んだ
去年から最近集中的に読んでいる吉田修一さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「熱帯魚」(文春文庫)について。
これ、3つの短編が収録されている。それぞれこんなあらすじ。
・「熱帯魚」:
大工の"大輔"は子連れの美女"真実"とその娘"小麦"と同棲し、結婚を目指しているのだが、そこに毎日熱帯魚ばかり見て過ごす引きこもり気味の義理の弟"光男"までが加わっていた。そんな不思議な共同生活の中で、ふたりの間には微妙な温度差が生じていたが、その矢先、大輔は、新築中の家の施主の娘にちょっかいを出してしまう。まさに娘との火遊び中に火事騒ぎを起こしてしまい、この騒ぎをきっかけに大輔を取り巻く人との関係が崩れ始める...。
・「グリンピース」:
半同棲状態の"草介"と"千里"は付き合いだして2年ほどたつが、近頃の草介は千里が自分の彼女であることが恥ずかしいと思っていた。そして、友達の彼女の"椿"のことが気になりだし、椿も自分のことが好きなのに違いないと思い込んでいた。ある日、草介は椿と千里を比較し、千里に対してイライラをつのらせて、わし掴みにしたグリーンピースを思いっきり投げつけてしまう...。
・「突風」
"新田"は、久しぶりに取れた長期の休暇を千葉の九十九里で過ごすことにし、そこの民宿で住み込みのアルバイトを始めた。その民宿で出会った奥さんは、そのあたりでは異彩を放つ存在だった。そんなある日、その日奥さんをちょっとの間、ドライブへ連れ出したが...。
基本的にこの3つの短編はどれも恋愛小説。ただし共通しているのはどの男もみんな自分勝手で自己中心に生きている。で、個人的によかったのは、「熱帯魚」の主人公の大輔。どことなく鈍感で、まわりに対して押しつけがましい仕切り屋で、ひとりで空回りしている。それでも彼の感情や考え方ってどことなく理解できるし、彼の孤独感も理解できるもの。しかもなんだかんだでまわりの人々もやさしい人なのがちょっと切ない。
この短編集「熱帯魚」を読み終えて、吉田修一さんのいままでの小説はすべて読了。後は最新刊の「怒り」を読めばコンプリート達成。世田谷中央図書館からの貸し出しOK連絡を待つばかり。
cf. 吉田修一 読破 List
- 最後の息子 (1999)
- 熱帯魚 (2001)
- パレード (2002)
- パーク・ライフ (2002)
- 日曜日たち (2003)
- 東京湾景 (2003)
- 長崎乱楽坂 (2004)
- ランドマーク (2004)
- 7月24日通り (2004)
- 春、バーニーズで (2004)
- ひなた (2006)
- 女たちは二度遊ぶ (2006)
- 初恋温泉 (2006)
- うりずん/吉田修一・佐内正史 (2007)
- 悪人 (2007)
- 静かな爆弾 (2008)
- さよなら渓谷 (2008)
- あの空の下で (2008)
- 元職員 (2008)
- キャンセルされた街の案内 (2009)
- 横道世之介 (2009)
- 空の冒険 (2010)
- 平成猿蟹合戦図 (2011)
- 太陽は動かない (2012)
- 路(ルウ) (2012)
- 愛に乱暴 (2013)
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