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Thursday, June 19, 2014

「孤独の森/大崎善生」を読んだ

Yoshioosaki_kodokunomori ほとんどの小説を読み尽してしまった大崎善生さんの作品。「あ!新作だ!」と思って三茶Tsutayaで買った「孤独の森」(角川文庫)だったんだけど、以前に読んだ「存在という名のダンス」の改題だった...。ともかく先日のブラジルUAE出張でもう一度読んでみた。
 あらためてこんな話。舞台は北海道岩見沢にある、孤児院と病院と学校が一緒になったような、厳しいルールと鉄条網で世間から隔離された全寮制の施設。身寄りのない子供や親と一緒に暮らせない子供たちが住むその施設は"梟の森"と呼ばれていた。で、その施設は、戦争中に多くの人間の死を見て、人間の憎悪を知った医師"加納重吾郎"が子供たちの教育のために作った場所だった。その"梟の森"で暮らす小学6年生"相川宗太"は函館の病院にいる父の危篤を知り、父に会うために厳しく管理統制され、外の世界との接触は禁じられている施設を脱走する...。
 これ、隠れキリシタンの弾圧やナチの犠牲になったユダヤ人などに通じる人間の残忍な憎悪と、それに立ち向かう少年達の戦いを描いたジュブナイルでダークなファンタジー小説。ジュブナイルなんだけど、迫害の歴史や子供達をさらったハーメルンのバイオリン弾き、人に憑依するみたいなオカルト、凶暴で残虐に人を噛み殺すヒグマなどなど、ダークな描写が続く。そこに父を乗り越えて、仲間を作って守って助けられるという少年の成長の物語が軸としてあって、あらためて大崎善生さんの新境地を堪能させてもらった感じ。
 なんだかんだでもう一度読めてよかったかもしれない。

cf. 大崎善生 読破 List
- 将棋の子 (2001)
- パイロットフィッシュ (2001)
- アジアンタムブルー (2002)
- 九月の四分の一 (2003)
- ドナウよ、静かに流れよ (2003)
- ロックンロール (2003)
- 孤独か、それに等しいもの (2004)
- 別れの後の静かな午後 (2004)
- ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 (2005)
- 優しい子よ (2006)
- タペストリーホワイト (2006)
- 傘の自由化は可能か (2006)
- スワンソング (2007)
- ディスカスの飼い方 (2009)
- 存在という名のダンス (2010)
- Railway Stories (2010)
- ランプコントロール (2010)
- ユーラシアの双子 (2010)
- 西の果てまで、シベリア鉄道で -ユーラシア大陸横断旅行記 (2012)
- エンプティスター (2012)
- 赦す人 (2012)
- 孤独の森 <「存在という名のダンス」改題> (2012)

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