「水の柩/道尾秀介」を読んだ
去年あたりからガンガン読んでる道尾秀介さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「水の柩」(講談社)について。
こんなあらすじ。老舗旅館の長男で中2の"逸夫"は、自分が「普通」で退屈な日々を過ごしていることをことを嘆いていた。同級生の"敦子"は両親の離婚や級友からいじめを受け、誰より「普通」な生活を望んでいた。2人は文化祭をきっかけに言葉を交わすようになったが、小学6年の時に埋めたタイムカプセルの手紙を一緒に取り替えないかという頼みを敦子より受けた逸夫は、自分の世界が色づき始めたことを感じていた。しかし敦子は秘めた決意を持っていた...。
これ、中2の"逸夫"を中心に、同級生の"敦子"ともう一人の主人公である逸夫の祖母"いく"のつらい過去を中心に、苦しい過去は水の中に捨てて、まっさらな1日としてやり直して生きていこうという話。ダムに沈んだ町とタイムカプセルに入れた過去の手紙、そこに秘められた思いと必死に隠す嘘がつまっていて、これが切なくて痛々しい。でもこれを乗り越えて、最後に希望の光が見えてくるんだけど、文中の台詞「とにかくぜんぶ忘れて、今日が1日目って気持ちでやり直すの」という言葉がとてもよかった。
昔、相模湖のダムに行ったとき、壮大なダムに感じるこれを作りあげた人間の凄さ、その陰に潜む多くの犠牲、水の美しさと不気味さを感じたことを思い出した。またどこかのダムに行ってみたいです。
cf. 道尾秀介 読破 List
- 向日葵の咲かない夏 (2005)
- シャドウ (2006)
- 片眼の猿 -One-eyed monkeys- (2007)
- ソロモンの犬 (2007)
- ラットマン (2008)
- カラスの親指 by rule of CROW'S thumb (2008)
- 鬼の跫音 (2009)
- 花と流れ星 (2009)
- 球体の蛇 (2009)
- 光媒の花 (2010)
- 月の恋人-Moon Lovers- (2010)
- 月と蟹 (2010)
- カササギたちの四季 (2011)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- 水の柩 (2011)
- 光 (2012)
- ノエル-a story of stories- (2012)
- 笑うハーレキン (2013)
- 鏡の花 (2013)
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