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Wednesday, October 22, 2014

「かばん屋の相続/池井戸潤」を読んだ

Junikeido_kabanyanosozoku 今年集中的に読んでいる作家のひとり池井戸潤さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「かばん屋の相続」(文春文庫)について。
 銀行に勤める男たちが出会う様々な困難と悲哀を描いた6つの短篇集。それぞれこんなこんなあらすじ。
 ・「十年目のクリスマス」:
 銀行員の"永島"は、デパートの高級宝飾店で10年前に倒産した顧客の神室電機社長を見かけた。羽振りが良さそうな"神室"の姿を見て不信に思った永島は、この10年の間、神室に何が起きたのか探り始める...。
 ・「セールストーク」:
 銀行員の"北村"は、赤字続きの印刷会社社長の"小島"に、融資見送りが決まった旨を言い渡した。しかし、小島は5,000万円もの融資を別口で借り受け、倒産危機を乗り越えた。小島はどうやった5,000万もの融資を受けられたのか...。
 ・「手形の行方」:
 仕事はできるが業務態度の悪い"堀田"が、取引先のタバタ機械から集金してきた手形を無くしてしまった。深夜にわたり行員総出で手形を探したが、見つからない。上司の"伊丹"は、堀田の当日の行動から手形の行方を探り出そうとするが...。
 ・「芥のごとく」:
 20年年近く大阪で鉄鋼商社を営んできた豪傑女社長の"土屋"の担当になった銀行員2年目の"山田"は、彼女との取り引きを続けるうちに、彼女の豪胆さに惹かれ、応援したい気持ちになっていた。しかし、山田のそんな意欲とは裏腹に、土屋の会社は次第に傾き始めて行く...。
 ・「妻の元カレ」:
 入行して10年目の銀行員"ヒロト"は、ふとしたことから妻宛てに届いた昔の元カレの葉書を見つけてしまう。そこには元カレが会社を設立し、代表取締役に就任したという報告が書かれてあった。海外勤務の希望もたがわず出世街道から外れたヒロトにとって、その葉書に胸をざわつかせていた。そんな妻は再び働き出し、妻に対しての疑問が芽生え始める...。
 ・「かばん屋の相続」:
 父が経営するかばん屋を嫌って銀行に就職した長男とは異なり、次男は父を支えてかばん屋を手伝って来た。しかし父親が急死し、遺された遺言状にはかばん屋を長男に譲る旨が書かれていた。銀行を退職し、手のひらを返したように父親のかばん屋を引き継いだ長男だったが、取引先の弱小信金を見下す傲慢な態度を取り、担当の"太郎"は苦々しく思っていた...。

 この6つの短編、半分くらいが池井戸潤さんらしからぬ厳しい結末になっている。個人的によかったのは、「芥のごとく」と「かばん屋の相続」。「芥のごとく」は大不況の中、最後まで厳しい結末だったんだけど、それがリアリティあふれるものになっていた。またタイトルの「かばん屋の相続」は、お家騒動と勧善懲悪な結末がなかなか痛快だった。
 今まで読んできた池井戸潤さん作品は、最後は悪い奴をやっつける話が多かったけど、この「かばん屋の相続」は救いようのない結末が描かれた話も多かった。やはり三菱銀行退職ということで、銀行に対する造詣や働く人々のツラさと喜びを見事に描いていると思う。なかなかよかったです。

cf. 池井戸潤 読破 List
- 架空通貨 (2003)
- 株価暴落 (2004)
- 銀行仕置人 (2005)
- 鉄の骨 (2009)
- 民王 (2010)
- 下町ロケット (2010)
- 新装版 不祥事 (2011)
- かばん屋の相続 (2011)
- ルーズヴェルト・ゲーム (2012)
- ようこそ、わが家へ (2013)

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