「あるキング-完全版-/伊坂幸太郎」を読んだ
ずっとハマって読んでる作家・伊坂幸太郎さん。以前単行本で読んだことがある「あるキング」(徳間書店)を含め、雑誌連載版、単行本版、徳間文庫版のすべてを収録した「あるキング-完全版-」(新潮文庫)は刊行された。せっかくなんで世田谷中央図書館で借りて読んでみた。
あらためてこんなあらすじ。仙醍にある弱小地方プロ野球球団「仙醍キングス」の熱烈なファンである両親のもとに生まれた「山田王求」。「王が求め、王に求められる」ように、そして「王」と「求」の文字を繋げると「球」になる「王求」と名づけられた1人の少年。生まれた時から彼のずば抜けた才能に気づいた両親によって、プロ野球選手になるべく育てられた王求は、仙醍キングスへ入団するために超人的な力が備わった選手に育っていった...。
本当の天才が現れたとき、人はそれをどう受け取るのかをテーマにした作品。すべての記録を塗り替える素質を持ちながら、世間は彼に味方をせず、逆に才能を潰そうとする。そこにはゆがんだ正義があり、嫉妬があり、暴力が存在している。
群像劇の手法で王を描いた雑誌掲載版、シェイクスピアを軸に寓話的色彩を強めた単行本版、そして伊坂さんらしいギリギリのユーモアを盛り込んだ徳間文庫版...。今回3つのVersionの「あるキング」を読んだが、作者が微妙にかつ意思を持って変えていることで、読んだ印象は確かに変わる。たたこの試み自体は面白いんだけど、正直3つを連続して読むとだんだんゲンナリしてきて、読破するのに時間もかかってしまった。出版のたびに文章を直し続ける伊坂さんの努力には敬意を表するものの、飽きてしまったのも事実。やっぱり時間を置いて読むほうが性に合ってると思いました。
cf. 伊坂幸太郎 読破 List
- オーデュボンの祈り (2000)
- ラッシュライフ (2002)
- 陽気なギャングが地球を回す (2003)
- 重力ピエロ (2003)
- アヒルと鴨のコインロッカー (2003)
- チルドレン (2004)
- グラスホッパー (2004)
- 死神の精度 (2005)
- I LOVE YOU/伊坂幸太郎・石田衣良・市川拓司・中田永一・中村航・本多孝好 (2005)
- 魔王 (2005)
- 魔王(文庫) (2005)
- 砂漠 (2005)
- 終末のフール (2006)
- 陽気なギャングの日常と襲撃 (2006)
- フィッシュストーリー (2007)
- 絆のはなし/伊坂幸太郎x斉藤和義 (2007)
- ゴールデンスランバー (2007)
- 実験4号 -後藤を待ちながら (2008)
- Re-born はじまりの一歩/伊坂幸太郎・瀬尾まいこ・豊島ミホ・中島京子・平山瑞穂・福田栄一・宮下奈都 (2008)
- モダンタイムス (2008)
- あるキング (2009)
- あるキング-完全版- (2015)
- SOSの猿 (2009)
- オー!ファーザー (2010)
- バイバイ、ブラックバード (2010)
- 『バイバイ、ブラックバード』をより楽しむために ポスタル・ノベル編 (2010)
- マリアビートル (2010)
- 文藝別冊 総特集 伊坂幸太郎 (2010)
- 3652-伊坂幸太郎エッセイ集- (2010)
- 仙台ぐらし (2012)
- PK (2012)
- Happy Box/伊坂幸太郎・山本幸久・中山智幸・真梨幸子・小路幸也 (2012)
- あの日、君と Boys/ナツイチ制作委員会(編)・伊坂幸太郎(著)・井上荒野(著)・奥田英朗(著)・佐川光晴(著)・中村航(著)・西加奈子(著)・柳広司(著)・山本幸久(著) (2012)
- 夜の国のクーパー (2012)
- しあわせなミステリー/伊坂幸太郎・中山七里・柚月裕子・吉川英梨 (2012)
- 最後の恋 MEN'S -つまり、自分史上最高の恋。-/朝井リョウ・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・越谷オサム・白石一文・橋本紡 (2012)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- 残り全部バケーション (2012)
- ガソリン生活 (2013)
- 死神の浮力 (2013)
- 首折り男のための協奏曲 (2014)
- Wonderful Story/伊坂幸犬郎・犬崎梢・木下半犬・横関犬・貫井ドッグ郎 (2014)
- アイネクライネナハトムジーク (2014)
- キャプテンサンダーボルト/阿部和重・伊坂幸太郎 (2014)
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