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Wednesday, July 22, 2015

「シャイロックの子供たち/池井戸潤」を読んだ

Junikeido_shyrocknokodomotachi ここ数年集中的に読んでいる作家のひとり池井戸潤さん。三茶Tsutayaで買って読んでみた「シャイロックの子供たち」(文春文庫)について。
 これ、東京第一銀行長原支店を舞台にし、銀行員達の葛藤を描いた連作短編群像小説。そろぞれこんな話。
 ・「歯車じゃない」:
 長原支店副支店長の"古川"は高卒たたき上げの反エリートの人物。一方、同支店"小山"は融資課で有名大学卒の現代っ子。古川の不祥事の責任を自分に擦り付けられたことを知った小山は、古川に反抗的な態度を取り続ける。それに腹を立てた古川はとうとう小山に手をあげてしまう...。
 ・「傷心家族」:
 大城戸工業への融資案件を任された融資課員の"友野"は、この融資を決めなければ自分と家族の未来がないと崖っぷちに立っていた。一方、大城戸工業の社長"大城戸"は、昔東京第一銀行に見捨てられたあてつけに、無情にも競合するライバル銀行からの融資を受けるという...。
 ・「みにくいアヒルの子」:
 東京第一銀行長原支店で100万円が紛失した。支店メンバー総動員で無くなった100万円を探したところ、女子行員の"北川愛理"のカバンの中から、その日の日付が印刷された帯封が発見された。愛理は有能な女子行員で、疑いをかけられたが、愛理の上司である課長代理"西木"は彼女を信じた。そして、古川副支店長をはじめ、支店のトップたちはポケットマネーを払い、事件をうやむやにしてしまった...。
 ・「シーソーゲーム」:
 業務課の課長代理"滝野"は支店のエースとしてバリバリと実績を上げていたが、同じ業務課の課長代理"遠藤"は、真面目に仕事をこなしているが業績が伴わない。そんな中、遠藤が大口の取引先をものにした。その取引先の社長に挨拶するために、遠藤の上司"鹿島"は遠藤と一緒に出かけたが、鹿島が行った場所はとある神社だった...。
 ・「人体模型」:
 人事部長の"坂井"は、とある男の経歴をみて、その男の人となりを肉付けしていた。その男は長原支店の営業課相談グループ課長代理"西木"だった。その西木は何者かとバーで落ち合った直後、失踪してしまっていた...。
 ・「キンセラの季節」:
 かつて甲子園を目指し野球に打ち込んだ銀行員"竹本"は、運命のいたずらによって野球の夢を断たれ、高校を卒業後、銀行員となった。そんな竹本は失踪中の"西木"の後任として臨時で西木の仕事を担当していた。そこで竹本は西木が支店の行員達の指紋を採取していたことを知る...。
 ・「銀行レース」:
 検査部の"黒田"は、長原支店で起きた100万円紛失事件の調査を進めていた。そこで支店のトップたちが100万円をポケットマネーで埋めていた事実にたどり着いたが、逆に黒田の過去を知る支店長"九条"にゆすられてしまう...。
 ・「下町蜃気楼」:
 融資課の新人"田端"は、女子行員"北川愛理"とともに、支店のエース"滝野"が行っていた架空融資に疑いを持ち、真相を突き止めていく...。
 ・「ヒーローの食卓」:
 長原支店のエース"滝野"は自分の幼少時代を思い出しつつ、今の愛する家族への思いとともに癒着という自分の犯した罪に押しつぶされていく...。
 ・「晴子の夏」:
 長原支店で働く"晴子"は3年前に自殺で夫を失い、西木の死を知る。愛理と話すうちに、西木は殺されたのではなく自主的に失踪したのではという疑念を持つ...。

 とある東京の町の銀行を舞台に、現金紛失事件が起こり、その後銀行員が失踪する。この事件を軸に、高卒たたき上げの人物の誇りとか、格差のある社内恋愛とか、理想と現実と人生の岐路とか、家族への想いとか、上がらない成績への焦りとプレッシャーとかがこれでも描かれている。不正に至るまでの過程など、銀行内部がリアルに描かれ、ノンフィクション小説のようだった。普通に働き、家族とともに幸せを実現することの難しさに、身がつまされた。
 この"シャイロック"とは、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」に登場する悪徳高利貸しのこと。腐敗しきった話ばかりだったけど、読み終わってひっかかった小説だった。

cf. 池井戸潤 読破 List
- 架空通貨 (2003)
- 仇敵 (2003)
- 株価暴落 (2004)
- 銀行仕置人 (2005)
- シャイロックの子供たち (2006)
- 鉄の骨 (2009)
- 民王 (2010)
- 下町ロケット (2010)
- 新装版 不祥事 (2011)
- かばん屋の相続 (2011)
- ルーズヴェルト・ゲーム (2012)
- ようこそ、わが家へ (2013)

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