「サファイア/湊かなえ」を読んだ
最近ごぶさたの湊かなえさん。三茶Tsutayaで買って読んでみた「サファイア」(ハルキ文庫)について。
7編の短編が収められた小説、それぞれこんなあらすじ。
・真珠:
"平井篤志"は、"林田万砂子"という50歳女性に呼び出され話を聞くことに。万砂子は自身の生い立ちについて語り出す。「母親が厳しくて、お菓子を食べさせてもらえず、ムーンスター社のムーンラビットというイチゴ味の歯磨き粉で歯を磨くことで満足していた」「昔は美人で、モテていた」「職場の同僚"M子"がお香を焚きながら寝て、火災で死んでしまった。そのM子もムーンラビットを好んでいた」...。
・ルビー:
出版社編集者の主人公が実家に帰ると、隣の老人福祉施設"かがやき"に入所している"おいちゃん"という老人の話を聞く。おいちゃんは母親を気に入り、高価な和菓子などを差し入れるようになり、そのお返しに母親は庭で採れた野菜や手料理を差し入れる。そんな交流が続く中、おいちゃんはルビーのブローチを母親にプレゼントした...。
・ダイヤモンド:
"古谷治"は、お見合いパーティーで知り合った"山城美和"と交際し、幸せな結婚生活を夢見ていた。婚約指輪としてダイヤモンドの指輪も買い、美和にプレゼントした。治は一緒に食事をしたレストランを出ると、そのレストランの扉に激突し気を失った雀をみつける。他の客に踏まれないよう、治は雀を安全な場所に移してあげた...。
・猫目石:
"大槻真由子"は、隣人の"坂口"という女性が飼い猫"エリ"を探しているところに会い、一緒に猫を探すことに。中学生の娘"果穂"、夫"靖史"も猫探しに協力し、木の上にいたエリを靖史が無事に保護した。その後、坂口は感謝の印として、靖史に妻・真由子の秘密を明かす。「真由子さんはツナ缶をスーパーから万引きをしています」...。
・ムーンストーン:
市議会議員の妻で一児の母の"わたし"は幸せな生活を送っていたが、夫が国政選挙で落選すると夫のDVが始まってしまう。度重なる暴力は娘にも向かい、子供を救いたい一心で、"わたし"は夫を死亡させてしまう。正当防衛とは考えられず、逮捕された"わたし"の元へ、敏腕有名弁護士となった中学時代の女友達がやってきて、「あなたを弁護したい」と申し出てきた...。
・サファイア:
"紺野真美"は、幼い頃から何かをねだるということができず、おごってもらうといったことも苦手だった。そんな彼女だったが、旅先で出会った"中瀬修一"によって変わっていき、中瀬は真美にプレゼントをするようになった。メイクもしなかった真美だったが、口紅をもらったことがきっかけで、オシャレをするようにもなった。プレゼントをすることの楽しみもわかり、中瀬にオーダーメイドのカバンをプレゼントした。そして中瀬に、20歳の誕生日に「指輪が欲しい」と最初で最後のおねだりをした...。
・ガーネット:
"真美"は"中瀬"の死を悲しみ、大量の睡眠薬を服用して自殺を図った。隣人の"タナカ"が救急車を呼びことなきを得たが、真美は「彼を返してくれないなら、私に二度と関わるな!」と怒鳴りつけてしまう。その後、真美は食品会社に就職するかたわら、小説を書き、小説家としてデビューする...。
これ、人間の出会いと別れと己の罪悪を描いた短編集。どの話もどこか毒があり、そこにひっかかる。個人的によかったのは「ダイアモンド」。幸せになったのか、不幸になったのかわからない不思議感がよかった。ただ、湊かなえさんの本は何冊か読んでるけど、個人的には多くの伏線の中でジワジワと追いつめられていく長編の方が好きかもしれない。ともかくこれからも少しづつ読んでいきたい。
cf. 湊かなえ 読破 List
- 告白 (2008)
- Nのために (2010)
- 夜行観覧車 (2010)
- 往復書簡 (2010)
- サファイア (2012)
- 白ゆき姫殺人事件 (2012)
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