「人質カノン/宮部みゆき」を読んだ
徐々に読んでる宮部みゆきさん。三茶Tsutayaで買って読んでみた「人質カノン」(文春文庫)について。
都市を舞台にした7つの短編小説集。それぞれこんなあらすじ。
・人質カノン:
OLの遠山逸子は忘年会の帰りに立ち寄ったいつものコンビニで強盗に合い、左遷された中年サラリーマンと夜食を買いに来た中学生と共に人質になってしまう...。
・十年計画:
自分を裏切った男を交通事故に見せかけて殺すために運転免許を取ったという中年女性タクシードライバーとの会話...。
・過去のない手帳:
五月病で大学に行かない青年が、たまたま乗った電車の中で、女性誌と一緒に拾った手帳。その手帳はまっさらで、アドレス帳にたったひとりの女性の住所と名前が書いてあった。その女性の名前を新聞の放火事件の記事で発見し、手帳の持ち主を探すことに...。
・八月の雪:
いじめグループから逃げる途中、交通事故に遭い片足を失い、部屋にひきこもっていた少年。亡くなった祖父の古い遺書を通して226事件のことを知っていく...。
・過ぎたこと:
ある探偵事務所に、ひどいいじめにあっている少年がボディーガードの依頼でやってきた。その少年に親身なアドバイスをしたが、少年が残した名前と住所は架空のものだった...。
・生者の特権:
恋人に裏切られ飛び降り自殺をするビルを探していたOLの田坂明子は、いじめにあい宿題のプリントを隠された少年と出会う。そして2人は隠されたプリントを取り戻すために、幽霊が出そうな夜の学校に潜り込む...。
・漏れる心:
主婦の照井和子が売りに出そうとしたマンションのオープンハウスの日。上階に住む大学生の部屋の水道管の壊れ、リビングルーム中が水浸しになってしまう...。
この7つの短編に通じるものは、現代人の孤独。特に「八月の雪」と「過ぎたこと」と「生者の特権」はいじめ問題をテーマにしていて、作者は少しでも前向きに変えたいという気持ちがにじみ出ていた。で、どの話も淡々と進み、インパクトを少ない。それがいい感じでさらっとひっかかる。宮部みゆきさんはミステリーの名手というイメージだけど、なんだかんだで人を描くのがうまいと思った。そんな作品だった。
cf. 宮部みゆき 読破 List
- 龍は眠る (1991)
- 今夜は眠れない (1992)
- 地下街の雨 (1994)
- 人質カノン (1996)
- 模倣犯 (2001)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- 荒神 (2014)
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