「橋を渡る/吉田修一」を読んだ
ずーっと読んでる吉田修一さん。世田谷中央図書館で借りて読んでみた最新作「橋を渡る」(文藝春秋)について。
こんなあらすじ。ビール会社に努める営業課長の"明良"は、ギャラリーを営む妻と暮らし、部下からも友人からも信頼されていたが、そんな彼の家に清酒や米という謎めいた贈り物が届く。都議会議員の夫と息子を愛する"篤子"は、思いがけず夫の収賄とママ友の浮気という秘密を知ってしまう。そして、TV局の報道ディレクターの"謙一郎"は香港の雨傘革命や生殖医療研究を取材していたが、結婚を控えたある日恋人の裏切りを知ってしまう...。
どこにでもいる夫婦や家族やカップルを主人公に、押しつけがましい正しさや行き過ぎた清潔さがもたらす未来について書かれた話。都議会でのセクハラ野次、タイでの代理出産、香港での選挙権をめぐる学生デモ、iPS細胞の研究...ふだん目にするニュースにひっかかったり、文句を言ったりして生活している普通の人々が自身のまわりで起きた不正に気づいた結果、それがどうような未来につながったかが描かれている。最初の3つの話はそれぞれの不正や不穏な予感に対してどう思い、行動するかが別々に書かれているんだけど、最終章で3つの話がすべてがつながり、不気味な未来が提示されている。最初は社会風刺なサスペンス風だったけど、最終章ではSFになっていたし、最後に向けて登場人物がイッキに増えるので読んでて戸惑ったけど、それが読書の醍醐味だと思う。なかなか面白かったです。
cf. 吉田修一 読破 List
- 最後の息子 (1999)
- 熱帯魚 (2001)
- パレード (2002)
- パーク・ライフ (2002)
- 日曜日たち (2003)
- 東京湾景 (2003)
- 長崎乱楽坂 (2004)
- ランドマーク (2004)
- 7月24日通り (2004)
- 春、バーニーズで (2004)
- ひなた (2006)
- 女たちは二度遊ぶ (2006)
- 初恋温泉 (2006)
- うりずん/吉田修一・佐内正史 (2007)
- 悪人 (2007)
- 静かな爆弾 (2008)
- さよなら渓谷 (2008)
- あの空の下で (2008)
- 元職員 (2008)
- キャンセルされた街の案内 (2009)
- 横道世之介 (2009)
- 空の冒険 (2010)
- 平成猿蟹合戦図 (2011)
- 太陽は動かない (2012)
- 路(ルウ) (2012)
- 愛に乱暴 (2013)
- 怒り (2014)
- 森は知っている (2015)
- 作家と一日 (2015)
- 橋を渡る (2016)
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