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Wednesday, March 22, 2017

「犯罪小説集/吉田修一」を読んだ

Shuichiyoshida_hanzaishosetsushu ずーっと読んでる吉田修一。世田谷中央図書館で借りて読んでみた最新作「犯罪小説集」(KADOKAWA)について。
 これ、犯罪によって炙り出される人間の姿を描いた5つの短編集。それぞれこんなあらすじ。
 ・「青田Y字路」:
 学校からの帰宅中、小1の少女が行方不明になり、事件は未解決のまま10年の歳月が流れた。そんなある日、同じ場所でまた別の少女が失踪する。10年前の関係者に加え、村人達も興奮状態になり、ある青年を犯人だと追い詰めていく...。
 ・「曼珠姫午睡」:
 "英里子"は、かつての小中学校時代の同級生だった"ゆう子"が殺人事件の容疑者で捕まったと知る。マスコミの報道ではゆう子にまつわる男女の愛憎劇が伝えられていたが、思い返えせば中学の頃からジトっとした色気をたたえたゆう子の記憶が蘇ってくる...。
 ・「百家楽餓鬼」:
 大手運送会社の御曹司"永尾"は、子供の頃からなに一つ不自由なく育ち、父が興した会社でも才覚を発揮するなど充実した日々を過ごしていた。しかし、マカオでカジノの味を覚えていくが、最初はストレス発散負けて当たり前と割り切って遊んでいたが、掛け金はどんどんエスカレートし、カジノにのめり込んでいく...。
 ・「万屋善次郎」:
 "善次郎"は都会で暮らしていたが、ひとり暮らしの父親の介護で帰郷し、限界集落と呼ばれる村に愛犬と暮らしていた。善次郎の歳は62歳だが、一回り以上も老人達しかいないこの村では頼りになる存在だった。しかし、村おこしの企画を進める進め方の行き違いから村のまとめ役から恨まれてしまう...。
 ・「白球白蛇伝」:
 かつてのプロ野球界の頂点に駆け上がった投手"早崎"は、選手生命は短く31歳で引退した。引退後も浪費癖が止まらず職を転々とする生活を送っていた早崎に、早崎のファンだった"田所"が救いの手を差し伸べる...。

 これ、実際に起きた事件や犯罪を犯した人物をモデルに描かれている。「曼珠姫午睡」は首都圏連続不審死事件で婚活偽装の犯人である木嶋佳苗だし、「百家楽餓鬼」はカジノにハマった大王製紙の経営者が不正に会社の資金を引き出した大王製紙背任事件をベースにしているし、「白球白蛇伝」は清原和博の覚せい剤取締法違反がモデルになっている。これが物語の発端となり、犯罪を犯してしまった者やその犯罪者を取り巻く人々の感情や悲劇が描き込まれていた。いやー読んでて痛い。痛いけどジワっとハマってしまう。「悪人」、「怒り」などなど吉田修一真骨頂の1冊だったと思う。

cf. 吉田修一 読破 List
- 最後の息子 (1999)
- 熱帯魚 (2001)
- パレード (2002)
- パーク・ライフ (2002)
- 日曜日たち (2003)
- 東京湾景 (2003)
- 長崎乱楽坂 (2004)
- ランドマーク (2004)
- 7月24日通り (2004)
- 春、バーニーズで (2004)
- ひなた (2006)
- 女たちは二度遊ぶ (2006)
- 初恋温泉 (2006)
- うりずん/吉田修一・佐内正史 (2007)
- 悪人 (2007)
- 静かな爆弾 (2008)
- さよなら渓谷 (2008)
- あの空の下で (2008)
- 元職員 (2008)
- キャンセルされた街の案内 (2009)
- 横道世之介 (2009)
- 空の冒険 (2010)
- 平成猿蟹合戦図 (2011)
- 太陽は動かない (2012)
- 路(ルウ) (2012)
- 愛に乱暴 (2013)
- 怒り (2014)
- 森は知っている (2015)
- 作家と一日 (2015)
- 橋を渡る (2016)
- 犯罪小説集 (2016)

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