「満月の泥枕/道尾秀介」を読んだ
全作品を完読している道尾秀介。この6月に刊行された新作「満月の泥枕」(毎日新聞出版)について。
こんなあらすじ。日雇い仕事で何とか食いつなぐ"凸貝(とっかい)二美男"と、母親に捨てられた"汐子"は、池之下町の貧乏アパートでその日暮らしの生活を送っていた。そんな二美男は、剣道師範の嶺岡道陣の孫"猛流"に、玉守池に沈む行方不明の祖父"道陣"の遺体を探してほしいと頼まれ、大金の謝礼に目がくらみ、遺体探しに協力することになった...。
これ、貧乏アパートに住むワケあり住人とそこに住む人々を巻き込んでの大騒動な人情モノサスペンス。大騒動の設定はやたら複雑で大がかりでなかなか楽しい。その一方で不慮の事故で子供を亡くした主人公と捨てられた姪が抱え込んでる悲しみが、ふたりのやたら明るい会話から浮かび上がって、ずっと切なさが漂っている。人が誰しも抱えている闇や負の感情、生きることの悲哀に人の優しさが染みてゆき、じわっとほっこりしたミステリーになってた。
この手のドタバタ人情系の話もいいけど、次回はじっとりと暗い道尾作品も読んでみたい。
cf. 道尾秀介 読破 List
- 背の眼 (2005)
- 向日葵の咲かない夏 (2005)
- 骸の爪 (2006)
- シャドウ (2006)
- 片眼の猿 -One-eyed monkeys- (2007)
- ソロモンの犬 (2007)
- ラットマン (2008)
- カラスの親指 by rule of CROW'S thumb (2008)
- 鬼の跫音 (2009)
- 龍神の雨 (2009)
- 花と流れ星 (2009)
- 球体の蛇 (2009)
- 光媒の花 (2010)
- 月の恋人-Moon Lovers- (2010)
- 月と蟹 (2010)
- カササギたちの四季 (2011)
- 短編工場/浅田次郎・伊坂幸太郎・石田衣良・荻原浩・奥田英朗・乙一・熊谷達也・桜木紫乃・桜庭一樹・道尾秀介・宮部みゆき・村山由佳 (2012)
- 水の柩 (2011)
- 光 (2012)
- ノエル-a story of stories- (2012)
- 笑うハーレキン (2013)
- 鏡の花 (2013)
- 貘の檻 (2014)
- 緑色のうさぎの話/道尾秀介(作)・半崎信朗(絵) (2014)
- 透明カメレオン (2015)
- スタフ staph (2016)
- サーモン・キャッチャー the Novel (2016)
- 満月の泥枕 (2017)
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