「燻り/黒川博行」を読んだ
散歩中、Tsutaya馬事公苑で買って読んでみた黒川博行の「燻り」(角川文庫)について。
これ、燻(くすぶ)り続ける男達が起こした9つの事件を描いた短編集。うだつの上がらない組員がチャカを預けられつかまる「燻り」、パチンコ点を強請る2人組の「腐れ縁」、ある社長令嬢の不倫現場を隠し撮りしたビデオでその会社を強請る「地を払う」、同日同時刻に同じ手口で侵入した強盗容疑者の容疑者となった空き巣の「二兎を追う」、古物美術品売買から過去の犯罪が露呈する「夜飛ぶ」、見つかった頭蓋骨で偽装する住職夫婦「迷い骨」、妻と別れたい画家の大学教授の「タイト・フォーカス」、男と共謀し資産家の夫を自殺に見せかける若妻の「忘れた鍵」、そしてデート嬢殺害の容疑をかけられた高校教師の「錆」...。
どれもこれも関西アンダーグラウンドで燻(くすぶ)り続け、蠢く男たちがシノギを削る9つの話が収録されている。何をやっても上手く行かず、ツいてない落ち目状態をサスペンス風に謎解き風に描かれていんだけど、人間味を感じさせる小悪人がいい。
でもやっぱり面白いのは関西弁の会話たち。
「分かった。100や。100万出そ」
「なんとセコい取引や。子供の飴代やないんでっせ」
「300や。それで手を打と」
「ねえ、新井さん、バナナの叩き売りとちがうんやで」
「500。これがいっぱいや」
「もうええ。よう分かった。ディスクの使い途はおれが考える。2度と電話はかけへん」
「くそっ、1千万や」──(「腐れ縁」より)
たまーに読みたくなる黒川博行作品だった。
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