「太陽がいっぱい/樋口毅宏」を読んだ
結構ツボな作家のひとり、樋口毅宏。世田谷中央図書館で借りて読んでみた「太陽がいっぱい」(扶桑社)について。
2016年9月に「もう飽きたんだよ。作家なんて男子一生の仕事じゃねえんだよ」と作家引退を表明した樋口毅宏が書いた引退作品がこれ。アントニオ猪木、長州力、ラッシャー木村、前田日明、高田延彦、谷津義章など往年のレスラーを彷彿とさせる人物達が登場するというプロレス界を虚実を描いた小説。
自分的にグッと来たのはまずは2話目「悪役レスラーの肖像」。はぐれ国プロ軍団のリーダー格"クラッシャー佐村"を描く。スーパースターとなったカルロス麒麟との抗争から佐村らは、世間から悪人扱いされるが、佐村の自宅には落書き、いたずら電話、飼い犬への虐待が続き、私生活が脅かされていく。それでもリングでしか生きられない佐村は制裁を受けながらも、耐え続けるというもの。これは当然、ラッシャー木村をモチーフにしているけど、晩年のマイクパフォーマンスの裏でこんな凄まじい人生を送っていたかと思うと泣けてくる。
もう1つは5話目「太陽がいっぱい」。崩壊寸前のプロレス団体が賞金1億円をかけてバトルロイヤルを開催し、レスラー達がガチで参戦するんだけど、樋口毅宏らしいドロドロで血みどろで殺戮な描写が続き、負け犬達の情念がリング上にうずまいていた。
しっかし、あのモハメドアリ戦、アンドレ戦、ホーガン戦など猪木の試合、鶴竜、ハンセン、佐竹、メガネスーパーなどなどをリアルタイムで観ていた自分としては、この小説はほんと泣ける。樋口毅宏らしいオマージュ満載なプロレス小説だった。
cf. 樋口毅宏 読破 List
- さらば雑司ヶ谷 (2009)
- 民宿雪国 (2010)
- 雑司ヶ谷R.I.P. (2011)
- テロルのすべて (2011)
- 二十五の瞳 (2012)
- ルック・バック・イン・アンガー (2012)
- タモリ論 (2013)
- 甘い復讐 (2014)
- 愛される資格 (2014)
- ドルフィン・ソングを救え! (2015)
- さよなら小沢健二-1994-2015 樋口毅宏サブカルコラム全集- (2015)
- 太陽がいっぱい (2016)
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